前回、映画「風と共に去りぬ」の登場人物、メラニーから、優しい女性と弱い女性は違うということを書きました。



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次はメラニーの交渉力を見ていきます。

優しくて、誰に対しても慎ましく真摯に接するメラニーですが、時に強いおねだりを発揮します。
その明確なおねだり力は、気が強くて自己中心的な主人公のスカーレットでさえ巻きこんでしまうほど。


彼女は人に頼ることが上手なのです。


晴れ晴れ


メラニーがアシュリーの子を身籠ったのは、戦争の真っ最中のアトランタでした。

出産予定日が近付くにつれ、町の戦火はひどくなります。

町のほとんどの人間は避難していますが、メラニーは動かすと早産の危険があるため、産後まで避難が出来ません。


スカーレットは逃げたくてたまらないのですが、メラニーを守るとアシュリーと約束したため、しぶしぶメラニーのお産を助けるために、危険なアトランタに残ることになりました。


晴れ晴れ


町中の人間が避難し、日に日に敵軍の砲火が近付く中、自分の出産のために友人が残ってくれています。

メラニーはスカーレットに「本当にありがとう、あなたは姉妹以上だわ」と深い感謝を示します。

しかし、絶対に「私の事はもういいから逃げて」とは言わないのです


私は初めてこのシーンを観たときに、目からウロコが落ちました。

私なら多分、友人に「申し訳ない」「私のせいで」「悪いなあ」と思います。
そして、肩身の狭い思いをしながら無駄な言い訳を並べるでしょう。


しかしメラニーは、この状況を「ありがとう」で済ませます
更に「私が死んだら、この子をよろしく」と、産後の約束まで取り付けようとするのです。


素晴らしい。
これが、人に物を頼む時の正しい姿勢です。


既にお願いをする行為自体が図々しいので、今更遠慮やためらいは無用なのです。
下手に出ません。


メラニーは後年、自分の死に際してスカーレットに再び「この子をお願い」「夫をお願い」と言い残します。

しかしこの時、スカーレットは娘を亡くし、家庭崩壊の危機を迎えていました。

そんな事情は無視です。


メラニーは、目的達成に必要な事柄のためには、相手に無駄な同情をしたり、振り回されたりすることは無いのです。


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とにかく、「諦めない」「遠慮しない」というのは、スカーレットとメラニーの共通点です。
この2人の強さは、諦め無さと遠慮の無さ故だと言い切っても良いほどです。


「風と共に去りぬ」には、もう一人キャラの濃い女性が登場します。

それが、レット・バトラーの愛人である娼婦のベルです。


ベルも優しく、信念を持っていて、多くの男たちの癒しになり、レットというパトロンを捕まえて商売を成功させた大物です。


しかしベルは魅力があるキャラクターですが、大した女ではありません。
何故ならベルは、諦めて遠慮した女だからです。


彼女は自分の身分や出自から、レット・バトラーへの愛を諦め、スカーレットに恋する彼を励まします。


しかし、諦めてしまった者は、運命からも男からも「諦めた者」として扱われることになります。



後年、レットは妻のスカーレットが、自分に指一本触れることを許さずに他の男を愛し続ける姿に苦しみます。

そして、優しく自分を包み込んでくれる愛人のベルと会いながら「同じ強い女なのに、スカーレットと君は何故こんなに違うんだろう」とこぼすのですが、だからと言ってベルを愛人以上の存在にはしてくれません。
それは、ベルが身分のせいにして、レットを諦めたからなのです。


タナボタとは、棚の前でじーっと待っていたからこそボタモチをキャッチすることが出来た例えです。

数日前に落ちたのを気付かず、ハエがたかってカビが生えたボタモチを発見しても、それはゴミです


望むものは自分で仕掛けて掴み取らねばならない、だからこそ、欲しい物に対して諦めてはダメなんです。


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少し脱線しましたが、「風と共に去りぬ」の大した女、メラニーはいかがでしたでしょうか。


彼女は優しい女性ですが、決して弱くはありません。
度胸もあり、人を動かす力もある、スカーレットとは違う強さを持った女性です。


彼女から「諦めないこと」「交渉術」が学べたことだと思います。


スカーレットの交渉術は、メラニーと真逆。
こちらもかなり面白いのですが、またいずれ。


薔薇


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