西尾常三郎という名前は聞いたことがあるような気もするがよく知らない。富嶽隊といえば陸軍四式重爆飛龍。表紙のきれいなイラストから分かるが、機首には起爆用の信管が突き出ている。この痛ましい改造を施された名機で出撃した男たちのはなし。
主人公西尾さんの東京恵比寿での幼少時代からスタート。お勉強がよくできた少年は陸軍士官学校へ進み、重爆操縦将校になる。少尉任官後、中国でさっそく実戦へ。同期生、仲間が次々と死ぬ。この時期の使用機材伊式重爆での戦闘の記述は貴重。対英米戦開戦後にはビルマ、スマトラ方面でまたも激戦。
著者は巻末で、西尾さんと陸士で同期だったことを明かす。まったく知らず読んでいたのでビックリした。そりゃエピソードも豊富にあるわけだ。同期生への追悼の書となすべきか、戦後に戦死した仲間の家族をまわり、遺書を借りてていねいに転載する。掲載かなわなかった仲間がいた場合には無念さとともに詫びる。そして主人公西尾さんはフィリピンで戦果無く果てる。結婚半年の新妻を残して。
平成12年 (原著‘恩愛の絆断ち難し’は平成2年)
光人社NF文庫
河内山譲 著
購入価格 : \110