皇室外交とアジア | 健全なVINYL中毒者ここにあり

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買った本ではないのだが手元にあるからには読む。書名のとおり皇室‘外交’を論考する書であり、‘比較的「近い」東南アジア諸国’、‘「遠い」東北アジア諸国’における日本への態度を多くとりあげる。帯にあるように‘どう受け取られたか’から見るアジア各国と日本との新密度を測る書、と言い換えられるかもしれない。著者の佐藤さんは東南アジアの安全保障・政治経済・文化が専門の方とのこと。

 

明仁皇太子の精力的な東南アジア諸国訪問、昭和天皇崩御、明仁天皇のアジア諸国訪問、徳仁皇太子・文仁親王のアジア諸国訪問に章をわけて、それぞれの現地での新聞、テレビでの報道を分析する。とくに新聞記事についてはかなり細かく見ていて、まさにそこでの文調に冒頭の「近い」「遠い」は如実に現れている。

 

その「遠い」国の最たるものである南北朝鮮についての文章を心待ちに読み進めたのだが、まったく無くて肩すかし。それもそのはず、よく考えたら誰も訪問してないじゃん!まったく訪問の機運とか、それによって得られるものが無い、と判断され続けているのだろう。そして本書では最後に‘皇室外交を、戦後の宮内庁の天皇制維持のための戦略’と結んでいる。つまるところは、国民の総意があって初めて皇室外交が成り立つわけだ。そう考えると、やっぱり南北朝鮮への訪問は実現するわけが無い。ただ本書ではあくまで‘今後、皇室外交を韓国や他の地域に広げて行く’のが妥当という立場だ。

 

平成19年

平凡社新書

佐藤孝一 著

 

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