三億円事件 | 健全なVINYL中毒者ここにあり

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一橋文哉という著者名はペンネーム、あるいは何人かの連名だとも言われているが、彼の著書はグリコ・森永事件、宮崎勤、赤報隊、オウムなどなど世間を騒がせた大事件についてのものが多い。どれも好奇心をくすぐられるものばかりだが、俺の中では優先順位が高いものではなく、気にはなるがいっさい読まずに来た。そこでたまたま出会った本書、まあ読んでみるか。

 

三億円事件は50年以上前の事件であるが、昭和の戦後重大事件TOP3に入るだろう。その犯人につながる人物と接触を持つという導入は、どうやら彼の著作の常道手段らしい。その人物からの路線とは別に著者なりに事件について調べ上げる。そこで書かれている事実のみだけでもおもしろい。断片的になんとなく知っていたはなしだが、なにせ俺の生まれる前の事件であり、ここでまとまったかたちで触れることができたのは興味深い。

 

犯人、そしてもしかしたらそのグループは、あまたの証拠、目撃証言を残したものの、結局現在にいたるまで真相は藪の中。冒頭に登場した謎の人物のツテをたどって真相に近づいていく感は、なかなか高揚感を与えてくれ、終始手に汗握らされる。ついには犯人?を突きとめサシで向かい合う。著者は厳しい質問で犯人?を追い詰める。最後まで緊迫感を失わせることなく、これはできのよいミステリー小説ですわ。

 

平成14年

新潮文庫

一橋文哉 著

 

購入価格 : \88