伊号潜水艦ものがたり | 健全なVINYL中毒者ここにあり

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槇さんの著書は以前に読んだことがあったので注意して店頭でパラパラと見てみたけれど、同じ書ではなかったので購入。俺が読んでいたのは‘潜水艦気質よもやま物語’で、本書は‘続・潜水艦気質よもやま物語’の単行本の文庫版だった。

 

3ページほどの分量の文章にイラストが添えられているという、いわゆる‘よもやま’系。しかしちょっと変わった構成をしている。トラック島の潜水艦部隊司令部に勤務していたベテラン潜水艦乗務員でもあった著者にとって、もっとも悔恨をもって思い出される出来事は、伊169潜のトラック港内における沈没事故。冒頭から巻末まで、そのできごとを主軸に書き進められる。

 

沈没前後の戦況、港の様子、個人的に知ったる乗組員たちについて触れつつ、ときおり一般的な潜水艦での生活、戦闘についての文章を挟んでいる。帯にある‘知られざるサブマリンの戦い’とか‘深海戦記’というのは、前書‘潜水艦気質よもやま物語’でこそ当てはまる言葉だ。そしてついに戦後、日本政府を動かし、港内に沈没したままの艦内を捜索して遺骨、遺物を引き揚げるに到った。著者は伊169潜と乗組員面々を直接知る数少ない人物として、もちろんトラックまで赴き、遺族との連絡や遺骨の収集などに尽力する。伊169潜とともに沈んだ乗組員への鎮魂の書。

 

平成26年 (原著‘続・潜水艦気質よもやま物語’は昭和62年)

光人社

槇幸 著

 

購入価格 : \108