家の見学はいったんお休みしよう。
次は土地探しだ。
土地探しといっても、「どこら辺に住みたいのか」を考えることだけど。
そこで候補に挙がってきたのが、実家の土地。
何度でもいうが、実家は田舎だ。
ド・田舎。
農業をしている家は今でこそ減ったが、父世代の家族を持つ家では、まだ農業を行っている世帯が多い。
我が家も農家であり、いくつもの田畑をもっている。
その為の農作業小屋と呼ばれる建物があるのだが、一見して「家」のような佇まいである。
農作業に使う農機具(コンバインや、米の乾燥機、保管庫)等が納められるような広さをもっている。
父は間もなくアラ80で、母も似たような年齢である。
兄は農業を継ぐ気はなく、両親もそれを認めている。
つまり、農業は父の代で終わるということである。(兄の子が農業に興味を示し、その傾向に進学したがっているが、未来は分からない)
体力的に厳しくなってきた農作業の仕事は、もうそろそろ終わりにしようかと両親の間では話をしているらしく、数年の間には締めるつもりだったとのこと。
そこに、私の家を建てたいという相談が。
独り身の私を案じて、実家のそばに暮らしてくれれば何かあっても兄を頼れるからと、実家の持つ土地に住むように勧められた。
初めは、敷地内の蔵を壊してそこに私の家を建てようと話していたが、兄の子供達のうち、誰かが実家を継ぐかもしれない可能性を考えると、この土地はその子のために残しておきたいものと考えが一致した。
それならば・・・・
実家から100m程離れた場所にある、農作業小屋の土地はどうか?
実家から近ければ、先の通り何かあった時に実家を頼れる。
町内が同じであるため、煩わしいであろう町内会のあれこれも(田舎なので町内会が結構面倒)、実家に協力を求められたり、実家と共通として免除してくれたりと少しは融通がきくだろう。
この先、もっともっと年老いて定期的な生存確認が必要になった時にも、兄や兄嫁と行き来が出来、兄の子供も実家に行くついでに私の家を覗いてくれれば事が済む。
兄弟もよく会う友達も親戚も、実家のそばにいる。
何より、もうすぐ車の免許返納をしなければならない時期になっている両親、特に父親の、「その後」の生活を今よりサポートしてあげられる。(田舎なので、免許返納すると、マジでどこにも行けない。食料品の買い物すら自転車で15分程かかる。そもそも免許返納する歳の老人に自転車を勧めるのも怖い)
あとは、私が猫を飼いたいから、夜勤や旅行等で不在にするとき、両親に私の家で面倒をみてもらうことが出来る。
実家の農作業小屋の場所に私の家を建てる事は、私の今後を心配する両親にとっても私にとっても、まあまあお互いに理想とする土地となった。強いて言えば・・・病院もお店も遠い事が大問題だが。
だけど・・・・
当初は
①農作業小屋をリフォームして私の家とし、大きな農機は手放す方向で、畑作業等に使う農機だけを後ろか横の建物に片づける方向にする。
②農作業小屋の前のスペース(畑と小屋用の駐車場でおそらく30坪近くあると思われる)に私の家を建てて、農作業小屋は今のまま残す。
の二択で迷うこととなった。
②を選択した場合、農作業小屋は壊さないで済むが、それの前に私の家が建つ事で、小屋に光が入らなくなるのではないか。また、駐車場スペースをつぶすと、どこに車を停めるのか(まあ、実家でもいいんだけど)が気になった。
母は私の心配点よりも、主幹道路の前に家が建つ事を気にして②の選択は嫌がっていた。(主幹道路といっても、ほんとに地元・・・町内民しか通らないような道路だから、私は気にならない)
では①を選択した場合。。。
広い駐車場も確保でき、家の後ろの畑は残すから、それに使う農機を片付ける場所も空いた土地に建てる事が出来る。
母は①が大押しだ。
だが・・・私は・・・ちょっと抵抗がある。
父は、もうすぐ車の免許返納をしないといけなくなるだろう。おそらく嫌がるだろうが、どんなに不便になろうと私をそれを許すつもりはない。父の起こすかもしれない事故の可能性で、誰かを傷つけるかもしれないという心配ではない。その事故で父を亡くしたくないという思いからだ。
免許を返納した父は、実家周囲に行動範囲が狭くなる。ホームセンターが大好きな父だが、自由にそこに行けなくなる。
田んぼの仕事はそろそろ終いだと話すが、「今」とは言っていない。「まだ」もう少しはやるつもりでいる。
免許返納した後の父が、私が家を建てることで、農作業すらも取り上げられてしまうことにならないだろうか。
免許を失い、農作業を無くし、孫は旅立ち、・・・父は何を楽しみに生きていくのだろうか。
それが私は怖い。
いずれ来る未来ではあるが、「今」でなくてもいい未来でもある。
母は、「畑があるから大丈夫」と笑って話すが、雨の日も、荒れている日も、暑い日も、田んぼに立つ父が、自分の覚悟より早く農作業を失った時、本当に大丈夫なのだろうか?
父の覚悟が出来るまでは、農作業は今まで通り続けてほしい。
だから、①のプランは、ダメなのだ。
自分のこの考えを話すとき、父は黙って聞いているが、母は笑って「大丈夫よ、ね?お父さん。もういいでしょ?田んぼは手放しましょう?」と言う。実家に帰ると、母はいつもこの話をするようになった。「お父さんとちゃんと話して。」と言う。別にケンカしているわけではないのに、この話は父には言いだしにくい。父に「私の家のために、父の日常をあきらめて」と言っているようなものだからだ。
自分の家を持つ事を、それほど急いでいるわけではないが、私の年齢も年齢だから、多少は慌てないとローン審査が通らなくなるかもしれない(と、勝手に思っている)。何年ローンを組むのか等も大きく影響してくる。
だから出来るだけ早く家を持ちたいとは思っている。
・・・もういっそのこと、実家の土地を使うのはやめようかな。
そう考えたこともあるが、両親が歩いてこれる距離に私の家があることはやっぱり捨てがたい理想だ。
友達には、両親が近くにいる生活を過ごす年数より、一人で生きる年数の方が明らかに長いのだから、優先すべきは自分の生活環境だよ。と言われる。確かにそうだ。ひとりなのだから、病院やスーパー等が近い方が絶対に助かると思う。
だけど、家を欲しがっているのは「今」の私なのだ。
だから、今の私が優先したいことを大事にしたいと思っている。
困った。
どうしたらいいのか。
土地さえも迷い始めた。
困った。
そして今、悩み疲れて、めんどくさくなってきている私が出来上がっている。
やばい。