福島瑞穂事務所から、昨年の「大逆事件100年後の意味」と題した院内集会に参加し
た縁により、「101年目の大逆事件の会」のご案内を頂いたので、成年後見案件で
横浜市旭区にあるグループホームを訪問する予定の中、永田町を経由して出かけることに
していた。

前日の夜半から首都圏にも雪が降り積もりダイヤの乱れが予想されるために早めに出かけ
ようとした矢先、グループホームから電話があり、館長の体調不良のため、訪問の延期
が求められた。

そのため、同伴する役所の担当者と他の日時の都合を確認する等慌ただしいひと時を過さ
ざるをえなくなってしまった。それでも会開始の30分前に参議院議員会館に到着し、
議員食堂で温かいおそばを食することはできたのだった。


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国会議事堂


国会議事堂辺りには、未だ名残雪があり、寒さも視覚的に伝わってくる。


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残雪

開会の挨拶に立った福島瑞穂社民党党首の元気な趣旨発言の後、
スピーカーの田中伸尚さんから、国会内でこうした催しをする意義が強調され、鎌田慧
さんからは政治裁判の側面から国策捜査が100年たっても変化が見られない実情の指摘
がなされ、大岩川嫩さんからは断罪されたのは行為ではなく思想性であり、思想裁判で
あったことが訴えられた。

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大逆事件

リレートークでは、民主党橋本勉衆議院議員が死刑廃止の観点から冤罪事件の危険性を唱え、
「大逆事件の真実をあきらかにする会」の事務局長・明大副学長の山泉進さんは会の出版物
の宣伝や、NHKで幸徳秋水・堺利彦の特集番組が29日放映される情報の提供を行った。

日仏会館研究員のクリスチ―ヌ・レビさんからは国家が犯した犯罪という歴史的事実の真相の
解明への期待が述べられ、横浜事件の第三次再審請求人・木村まきさんの発言や、
監獄人権センター事務局長(弁護士)から死刑執行の停止を求める緊急市民アクションの
呼びかけなどもあり、2時間ほどの会が終了した。

その後は、いつものながらの行動様式に則り、官庁街、日比谷公園を抜け、銀座方面へと
向かう。されど今日は、ヒューマントラスト有楽町のあるイトシアに直行しようと、逆に
国会図書館から国会議事堂の塀伝えに進み、憲政会館の前を左折し、景観を楽しみつつ、
残雪が眩しい坂道をゆっくりと下った。

ペニンシュラ前の交差点を渡り、有楽町マリオン前の交差点の信号で思いのほか待た
される。私服警官の姿も眼につことから、相当な重要人物の警備だと察せられた。

確かに、目の前を2台のオートバイに先導された車が何台か通り過ぎた。その中に
天皇陛下が御手を振りながら、窓越しから微笑みかけられる御姿が目を捉えたのだった。

議員食堂での食事の際に、天皇、皇后両陛下のご到着を知らせるマイク放送を聞いたが、
第180回国会開会式のおことばに次いで、有楽町朝日ホールにて、国立がん研究センター
創立50周年記念式典へのおことばのお帰りでの出来事だったようである。
時刻は14時30分近くではなかったかと思う。

園子温監督作品「ヒミズ」は14時45分から上映。

「ヒミズ」とはモグラのことだそうだ。原作は古谷実の漫画だが、その漫画の存在を知る
由もない。かつて日経夕刊の文化欄で園監督が、3.11を契機に自己の作品の転換を
語っていた記事を思い出すが、それが「ヒミズ」であったことは、私の中では繋がっていない。

もともと、映画を見るまでは「ヒズミ=歪み」と思っていたくらいなのだ。

3.11以降の青春映画とうたわれても中学生の純愛物語に思い入れるものがないので
しらっとしかなりえない。また、園子温ワールドの魅力はストーリー立てにある訳ではない。

何だか説明のつけづらい感情の爆発の仕方にある。これまでもかと突っ込む表現にある。

ご本人も語っているように、

・「退屈でつまらない日常が続くだけの日本でしかなくなった。」
・「一日一日が非日常 終わりなき日常を暮らす。暮らさざるをえない若者たち。」
・「新たな絶望、その絶望だけではもうやっていけない。」
・「この非日常を生きるための術を!」

との認識に立って

「若者の絶望、悲しみを叙情的描いたという映画」
「人間とはこんなもんだよという絶望的な姿を丸裸にするような映画」

園子温は、絶望よりも希望を持たざるをえない状況として、
3.11以降の日本社会を捉えるのだ。


キャスティングでは、染谷将太とニ階ふみが秀逸だ。ベネチア映画祭でW新人賞を
受賞したというのも、極めて納得がいく。

常連の役者の中では、渡辺哲、でんでん、吹越満、神楽坂恵、黒沢あすかなどは前作程の
良さが発揮できる場面も少なくあった。

染谷と二階が突出した存在感を放出していた。それが映画の全てといってもいいだろう。
脇もそうした役回りをしっかりと自覚した動きだったようにも見えるのだ。

スリ役の窪塚洋介の演技も捨てがたくあった。

園子温監督作品「ヒミズ」の意味合いや、3.11以降なるものの意義をもう少し解明
したくもあるのだが、

今月の13日の日経夕刊のシネマ万華鏡で、白井佳夫氏が、その通りと思わせる筆致で
言い当てている文章があり、

以下、抜粋してブログを終えたいと思う。

・漂流する価値観喪失の時代の日本で生きる、いわば中学生のロミオとジュリエットの
ドラマである

・前2作「冷たい熱帯魚」「恋の罪」のように、過激な血みどろシーンやサディズムの
シーンなどが、単眼的にそれ自体で完結してしまい、日本の風土から浮かびあがってし
まっているような不自然さは、ぎりぎり回避されている。

・その原因は、この映画が背景にリアルにとりこんだ大震災後の東北の惨状のリアリティ
というものだろう。

・それと、何人もの人間の死の悲劇を経てもなお自分たちは生きていかねばならぬ現代日本
のロメオとジュリエットと、それを核にして大きく拡がっていく、複眼的な人間集団ドラマ
の層の厚さであろう。