団塊のマーケッターのブログ



昨日に続いて、地元の図書館で借りた須田慎一郎「内需衰退」について、感想を寄せようとした

矢先、NHK7時のニュースで、管総理が浜岡原発の停止を中部電力に申し入れたとの記者会

見の様子が放映された。


この記者会見を、日本社会の転換を意味するのかどうか、管総理の言い方ではそうした熱き

ものは伝わってこなかった。


延命の一手ではないかととられられても、さもありなんとしか言いようがない。



話を、本題に戻そう。


何故、ユニクロとマクドナルドが躍進し、百貨店、総合スーパー(GMS)、ファミレスが衰退する

のか?そのキーワードは「すさまじいお買い得感」と須田氏は断じ、給料が上がらない時代の

消費マインドを、ややステロ的だが例示し、「内需衰退」の現象に肉薄しようと試みるのであった。



第1章「百貨店が日本から消滅する日」、第2章「総合スーパーの衰退とコンビニの憂鬱」、

第3章「デフレ地獄に苦しむ外食産業」と各業態の現況について、章立てして言及している。

要は、云わんとするのは、序章「新・下流層の消費マインドをとらえろ!」を問題提起とし、第4章

「勝ち組と負け組の決定的な違い」を結論とする組み立てで論を展開するのだった。


須田氏は、百貨店、総合スーパーが低迷を続け、衣ではユニクロ、食ではマクドナルドが躍進

する背景に、日本社会が、総中流層化から新下流層化への移行を指摘し、時代の変化に対応

できるビジネスモデルのみが生き残れるとの構図を描こうとする。


百貨店は、昨年の銀座三越の増床を最終章の幕開けと捉え、今春から来春にかけた大阪百貨

店戦争なるものの消耗戦をつくのであった。


ここら辺の指摘は、私がブログで述べてきたことと通底することが多い。


次に、総合スーパーとコンビニについては、過去の遺物と化したショッピングモールやコンビニ

成長神話の崩壊を告げる。


そして、吉野家の値下げは終わりの始まりとし、衰退一途のファミレス、更なる低価格化の地獄

を語る。


こうして、各業態の過去、現在の推移から未来を展望し、新たなビジネスモデルを構築できた

ところが生き残れるとのご宣託へ繋げるのであった。


これまでのビジネスモデルにしがみついているだけでは、どの業態も日本から消え去る以外に

ないことを訴え、新たなビジネスモデルの確立が痛切に求められていると須田氏は結ぶ。


新たなビジネスモデルの標的は、新・下流消費者層のハートをつかむことだと臭わしながら・・・


新・下流消費者層のハートをつかむことの重要性を主張する須田氏には、日本の内需は戦後

一貫して、少しでも豊かになろうとする中流層の隆盛によって支えられてきたとの認識に立って

「少しでもいいから他人よりお金持ちに見られたい」「ちょっと背伸びして贅沢な気分が味わい

たい」「他人に羨まれるような格好がしたい」との欲望こそが、中流層の旺盛な消費を生みだし

日本のGDPを押し上げた消費マインドのコアであったと解析される。


そして、須田氏はバブル崩壊とその後の失われた10年(20年?)、昨今の給与減少、少子高齢

化の進展により日本のマジョリティだった中流層は地盤沈下し、格差社会化の現状さえ指摘する。


また、かつての中流層の幸せを、「百貨店で高級品を大枚はたいて買い、スーパーで少し高め

の肉や野菜を奮発し、たまの休みにはファミレスの少し贅沢な料理を食べることに見出していた

と須田氏は解説し、「少し背伸びすることの優越感や金持ちに対するあこがれ、自分もお金持ち

になりたい、なれるという向上心や上昇志向や期待感があった。」との中流層の消費マインドを

準えるのだった。


そして、その「中流層はもう日本にはいなくなっている」との認識に対比し、新・下流消費者層なる

ものを描いて見せる。


須田氏は、新・下流層の消費行動を支えているのは、羨望というよりは現状維持や自己満足、

将来の期待感というよりは漠然とした不安感、優越感というよりは他人から取りこ残されていない

ことに対する安心感、充足感だと云い、「ちょっとした贅沢」が安さにつられて入った牛丼屋で

100円プラスしてセットメニューを頼む「ついで買い」や「衝動買い」や「今、これが流行している」

「ネットでみんなが勧めている」といった付和雷同的に売り上げNO1の商品に群がる等の傾向に

表れているとし、

「お金がないなら、ありきたりの量産品ですませ」と云った発想や材料費、人件費を下げて安売り

するだけの浅薄な手法では、お金はないが目の肥えた消費者にはすぐに見透かされてしまうとの

警告も須田氏は忘れない。


須田氏は、必然化する「内需衰退」とはいえ、GDPの6割の水準をキープしている内需にあって、

特に、提供側である流通・小売業者のビジネスモデルが変わらねばならないことを説くのだが、

3.11を契機に変わらねばならない私たちにのライフスタイルへに対しても、照射の視点が必要で

あることは言を俟たないだろう。