13時からの青山生涯学習館で開催された行政書士を対象にした「ソーシャル福祉サービス
ナビゲーションシステム」の説明会と19時からの門前仲町のちゃんこ料理屋「若の海」で行
なわれる前の職場の忘年会の合間を縫って、12月15日に日本第1号店として」オープンした
「アバクロンビー&フィッチ」銀座店を覗いた。
●アバクロ1号店に行列
http://www.asahi.com/business/update/1215/TKY200912150462.html
●アバクロ1号店オープン(写真12枚)
http://www.afpbb.com/article/entertainment/fashion/2675125/5045757
銀座4丁目交差点から銀座中央通沿って、松坂屋の前を横切り、6丁目交差点まで歩いて
くると、対面の角地に入店待ちの行列が続いていた。夕闇が覆っているにも関わらず、一時
「アバクロ銀座店」の1階には明りも照らされていなかった。
暗闇の中で待機するする人々は、これからの出来事に期待をはらませ、表情にも高揚感さ
え伺える。
「アバクロンビー&フィッチ」はアメリカンカジュアルの伝統を引き継ぎながら、着こなしは
ビンテージ感を漂わせつつ、コンテポラリーでセクシーであることを訴求してきた。
一時期のファイブフォックスでは、ビジネスはディオール、カジュアルはアバクロをパクリ続
けていたものだ。
フジテレビに対してM&Aを仕掛けていたホリエモンはアバクロのロゴが入ったTシャツを着
て颯爽とTvの前に姿を現したりした。
バーニーズ、グッチの社長を歴任した田代氏などは、アバクロの日本責任者として名を馳せ
ポスト特選ブランドとして話題も尽きなかった。
少し空けられた扉の先には、筋肉質の半裸の青年の姿が目に入った。
店内に入るまでは、それほど時間は要しなかったが、ワンフロアが狭いこともあって、お客
で一杯だ。20代30代の若い男女が圧倒的で、一部に中年の女性や、業界筋のおじさんが
紛れて入り込んでいる。外人客もそれなりに入店していた。
玄関の入口そばで、締まった腹筋美を誇る青年が半身、裸のまま、次から次へと女性と
ポラロイド写真をとり続けているのを横目で見遣りながら階段を上って行ったのだが、
11階まで行くのは大変だと感じ、2階からエレベーターを利用しようとしたら、1階からしか
乗れない言われ、仕方なく1階に戻ってエレベーターに乗った。エレベーター内には、胸を
露に筋肉質の体をみせる二人の男の販売スタッフが乗り合わせていたが、同じ柄のシャツ
を着た二人とも全く屈託のない表情を向ける。
8階止まりであったので、そこから11階まで階段を利用。壁面には筋肉質を誇る男性が
ワークに勤しんでいる絵が描かれている。これがアバクロンビー&フィッチの美意識であり
テーマであることが察しられた。
最上階の11階からは、各フロアを一瞥しながら、階段を一つ一つ降りてきたのだが、各フロ
アの違いは余り判然としない。しかし館全体ではエンターティメントストアとしての乗りがあり、
フロアにいるだけでエキサイトさせる。異時空間を彷徨う自分がそこにいる。そんな手ごたえ
さえ感じてしまうのだ。
若い販売スタッフは男女違えず誰もかしこも格好いい。
店内の曲に合わせて体でリズムをとる若い女性の販売スタッフ、皆皆タレントもどきだ。
商品そのものよりも、この環境、この場に来て、買う。
そしてアバクロを所有するという「体験消費」がエンターティメントストア「アバクロ」の真髄のように
思えてしまうのだった。
「アバクロンビー&フィッチ」は、従来の小売業態とは一線を画す、エンターティメントストアなのだ。
紛れもなく、新業態としての出現であり、脱価格の方向性を示す一手法であることは確かだと思う。
同じ銀座だったが、20年前に出現したサンリオストア、それ以後ではデズニーストア、スヌーピー
ストア等の類の系列に置いて、そのセクシー版と称えられないだろうか?何故か私は、アバクロ店
内を巡りながら、ニューヨークのマジソン74丁目のポロのショップを思い出してしまった。
原宿のポロショップを見たときも衝撃が走ったが、マジソンの本場ものはさらに上回っており、ライ
フスタイルとはなんぞやを骨の髄まで思い知らされたのだった。
アバクロ銀座は日本におけるファストファッションの最盛期での上陸のため、時期を逸したという説も
あるが、ファーストファッションに動いた人々ほどの広がりはなくても、「オープニングセレモニー」や
「ロンハーマン」などのラグジュアリー系セレクトショップとは格が違う動きを示すのではないだろうか。
アバクロ銀座はほとんどの百貨店が失った、「匂い」を醸し、「色」を持っている。
エンターメントストアの道に小売の未来をみたいと思う。
●2009.9月5日号