原田武夫さんがNHK第一ラジオあさいちばん「水曜ビジネスコラム」の
担当者に新たに加わったことをメルマガで知り、6月24日放送分を拝聴
したのだが、そのHP上で藤原直哉さんのインタビュー放送(7月3日)を
発見する。
タイトルは「ビジネス展望・政治の行方とこれからの経済」とあった。
●NHK第一 ラジオあさいちばん
http://www.nhk.or.jp/r1/asa/index.html
●水曜ビジネスコラム 私の仕事塾
http://www.nhk.or.jp/r1/asa/column/index.html
与謝野財務相が月例経済報告の発言にあったように、「景気は底を打っ
たと推定される」と見られ始めたことに対して、藤原さんは昨年の急激な
落ち込みが、単に止まったに過ぎず、日本の96年、97年、98年に亘る
情勢を引き合いにだして、更に2007年、2008年に続いて、2009年に
は世界的に抜本的な改善が見られない中で、3回目の金融危機が訪れ
ることまで断定されるのだった。
日本は97年の大手金融機関が破綻する際にも、直前まで政府・大蔵省
は景気回復をアナウンスしていたのだが、翌日には大手金融機関が破
綻の憂き目に合った事例を引き、藤原さんは、安易な安心感を振り回す
政府の対応に警鐘を鳴らされるのであった。
また、藤原さんは米国の金融と輸入に支えられ、各国がその米国に依
存した関係が消滅した現下の世界経済の中で、新しい経済体制に成功
した国は何処にも出現していない状況を指し示しながら、2007年、
2008年の世界恐慌は①ケインズ型の政府が金を出して経済を支える
か②規制を緩和し、小さな政府に徹するかの二つの代表的な経済運営
が破綻したことを物語っていると指摘されるのであった。
その上で、藤原さんは経済の枠組みに止まらない、政治の刷新まで視
野に置く各国独自のニューディル政策の立案、計画、実施の緊急性を
訴えるのであった。
さらに、藤原さんは「経済学」では今回の大恐慌の出口を見出だすことは
できないと言い切られ、経済学の前提である人間としての行動の仕方、
世の中のものの見方、価値観といったものを見直し、車や家電をもつこと
では幸せを感じられないなど、金がなくても不幸ではないと思う人々の意
識の変化に、百年前の経済は対応できていない重大な誤りがあると論破
されるのであった。
正に、藤原さんは「ハゲタカ」(新自由主義)から「風に舞い上がるビニー
ルシート」(人間のグローバリズム)への転換を提起されておられるのだ
ろう。
藤原さんは、不可避な3回目の世界金融危機に直面した場合、大企業は
リストラで応えるだろうが、それだけでは必ずや行き詰るり、破綻していく
と宣告され、また97年のように政府が右往左往すると、金融危機は更に
加速されると見通される。
そうした事態を避けるためにも、企業レベルでは自らの組織内から次代を
担うリーダーを生み出せる組織かどうかによって命運が決まり、国家レベ
ルでは金融危機に直面しても右往左往しない政治的なリーダーの出現と
政治体制の確立が求められ、しかも国の内、外から信認されなければな
らないと藤原さんは、インタビューの締めくくりにされるのであった。
残り少ない企業人生とはいえ、身を置く百貨店に目を移してみても
藤原さんの大転換後の時代を睨む眼差しに共鳴することは多い。