NHK「土曜ドラマ」のつながりでいえば、「ハゲタカ」の時代から
「風に舞い上がるビニールシート」の時代への転換にこそ2009年
現在の位置を読み解くキーがあるのではないだろうか?


工藤里佳はUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)日本支部を踏み
台にキャリアアップ先としてUNHCRの本部配属を目標にしていた。

それが現実化したにも関わらず前夫エドが命を落とした「フィールド」
を恐れる気持が拭えず、次の一歩が踏み出せない。

脳梗塞を患った父親は「言い訳に親を使うな、真相に目をそらすな」と
里佳を突き放し、

亡きエドは、かつて「キミは、見つめなければいけない景色を見ずに済
まそうとしている。」と<今>に留まる里佳に、「フィールド」に出る
ことを促したのだった。

アフガンの軍属に襲われそうになった少女・ソワイラを守るために銃弾
に倒れたエド、即死にも関わらずその大きな体で厳寒の中で少女を包む
込むのだった。死しても一人の少女を守り通したのであった。

直々に、少女からその話を伝えられ里佳には「エドの見てきた先の景色
が見たい」との思いが募り、「フィールド」が視野に入ってくるのだっ
た。

「新自由主義」の権化、ファンド資本主義「ハゲタカ」の陥落から、時
代のページはめくられ、「風に舞い上がるビニールシート」の位相へと
ヒューマンドキュメントは移っていく。

飽くなき欲望に囚われた、利己に彩る排斥の論理から、利他に重きを置
く優しさの理性に変換されて行くのだ。

工藤里佳の変革と成長は、2009年以降の世界の景色でなければなら
ないのだ。

NHK「土曜ドラマ」スタッフの心意気を買いたいと思う。