行政書士会への登録が済み、定年後には「申請取次ぎ」を中心とした
業務を軸にしていきたいとの思いと難民問題・入管問題について、リ
アルな現実に触れられるとの期待から「バックドロップ・クルディス
タン」を見にアップリンクファクトリーに訪れたのだが、「バック
ドロップ・クルディスタン」の上映後、「フツーの仕事がしたい」も
見ることができたのだった。

現代のリアル「蟹工船」とも評される「フツーの仕事がしたい」は、
セメント運送運転手、皆倉信和さんが国の過労死基準をはるかに超え
る劣悪な労働の中から、連帯ユニオンに加盟し、ユニオンの仲間と
共に会社の横暴と闘う姿を、映像会社をリストラされた土屋トカチ監
督が描いたドキュメンタリー映画である。

「バックドロップ・クルディスタン」共々、新自由主義社会にどっぷ
りと浸かっている日本社会の断面をしっかりと抉る。

こうした現実と余りに距離を置いた自己の生活基盤から安易な批評の
言葉は見つからないが、頑張っても頑張っても社会の仕組みによって
解放されない人々の存在を映画とはいえ、目の辺りにして心痛むばか
りだった。

住友セメント大阪という大企業のスタンス、その業務の一部をアウト
ソーシングされた物流会社や、その下請けの運送会社の生態がリアル
に映像で伝えられている。

皆倉信和さんが勤める下請けの運送会社の労働現場の非人間的な対応
に、今だこうした事態が続いていることに唖然とするばかりだった。

現代資本の労働者を支配(搾取)する構造はもう少し巧妙で善意の仮
面をかぶった対応であるはずなのに関わらず、ここではあからさまな
言辞と態度が示される。リアル蟹工船とは良くぞ言ったものだ。

皆倉信和さんのお母さんの葬儀の斎場まで押寄せる下請けの運送会社
の関係者。やくざもどき対応を繰り返す様にここまでするのかと怒り
さえ覚えた。また、その斎場が私の住まいの近くの横浜市北部斎場だ
ったこともリアル感を一層高めたのだった。

大転換の時代にあって、多文化、多世代交差共生社会化が一段と進展
する中での地域コミュニティーの在り処を探り、社会的な解決を目指
す「社会起業家的行政書士」としてのミッションを自己に課す私は二
つの映画を見ながら、心優しき人々の確かな存在とともに社会的な仕
組みによって、その心優しき人々を圧する現実に目を凝らしながら終
わった映画の先を考えてみるのだった。