職場近くのクリニックでの「胃と大腸の内視鏡検査結果」の診断も
無事に終わり、やっと酒を口にできると心を高ぶりさせながら、
帰途、渋谷東急本店の裏手にあるアップリンクファクトリーに立ち
寄るのだった。

「バックドロップ・クルディスタン」というクルド人難民の家族と
日本人の若者の交流を描いた映画だ。

2004年春、青山大学前の国連ビル前でクルド人「カザンキラン
一家」が72日間の座り込みを貫徹し、UHCR(国連難民高等
弁務官)への難民認定と第三国への出国をアピール。

2005年、カザンキラン一家の父と長男がトルコへ強制送還。

2006年日本に残っていたカザンキラン一家も難民として受け入
れる第三国へ出国を果す。

こうしたマスコミでも取上げられた場面を潜りながら、映画にも
登場し、映画監督である24歳の野本太さんが、クルド人家族と
日本人である自己を対置しながら、難民問題が投げ抱える問題を
考えていくのであった。

難民を社会問題的に捉えるのではなく、あくまで出逢った外国人
ファミリーと関わりをきっかけにし、ファミリーの生き様を追及
したプロセスの中に、クルド人難民の背景を浮き上らせていくの
だった。

日本国の難民に対する冷酷と思える対応、一方で出国先の第三国
ニュージーランドでの待遇とは余りに違い過ぎていた現実。
日本の川口での住まいは、長屋感覚の2階建てアパートの一室に
家族7人(?)が生活。ニュージーランドでは頑丈な平屋で部屋
数も多く、車も貸与され、生活費も支給されるという。

国家レベルの経済力の差が生活レベルに反映されていない日本の
貧しさに唖然とする思いにさせられる。

映像からの印象だけでなく、難民に関する法的知識や国際情勢へ
の知識があると描写の背景がより理解されるし、
「世界への入口がここにある」と叫ぶ吉岡忍さんの言葉も実感を
もって受止められるのだ。


●トルコ、イラン、イラクなどの地域で暮らすクルド人は国を持た
ない世界最大の民族といわれる。(約3000万人)

●日本の難民認定は主要30カ国で最下位。日本在住の約400人
のクルド人に難民認定者はいない。

●何故ならば日本政府がトルコとの友好関係を優先しているため、
トルコ国内にはクルド人を迫害する事実はないとしているためだ。

●難民に認定されないと「不法滞在者」とされ、収容されるか強制
送還されるかの危険が伴い、日本では生活できないため他国へ
難民申請することになる。

●収容を免れた人は「仮放免」になり毎月入国管理局へ出頭し延長
手続きを取らなければならない。

実は、この日は映画は一本だけでなく、「フツーの仕事がしたい」
も併映された。そしてその後に両監督のトークショーが用意されて
いたのだった。