渋谷uplinkに於いて、映画「蟹工船」を鑑賞後

川西玲子さんとのトークから

  

山田昌弘

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B1%B1%E7%94%B0%E6%98%8C%E5%BC%98


団塊のマーケッターのブログ


川西玲子さんとのトークは上手にかみ合ったわけではなかった。

相互が少ない時間の中で、自己の言い分を主張したに過ぎなかった。


観客は、5-60名といったところだが、上映した会場規模からは満員

と言っていいと思う。西洋系の金髪の外国人も何人か混じっており馴

染みの観客と思われる白髪の初老の婦人をはじめ、大学生風の男女

や年配のご夫婦、キャリア女性と多彩であった。


山田昌弘先生は、若干だが田中康夫さん的なおねい口調で語られる。


山田昌弘先生は「蟹工船」を評価するにあたって、3つのキーワードに

よって整理された。


(1)一つはロバートライッシュの「超資本主義」の中から、抜粋した言葉

  「安売りの裏で泣いている人が何人もいることを知って買え」を引合

  いに出して、果たして蟹缶を食べる人は、映画「蟹工船」で描き出さ

  れたようなことが起きていることを想像しなかったことからも商品を

  産み出す働く場をイメージすることの必要性を教訓化された。


(2)二つ目は「フーディズム」(フォード生産様式)の観点から、「蟹工船」

  を捉えると搾取的な形態を脱却して、労働者の生活の向上を図るこ

  とにより資本家も儲かる「近代的な労使関係」以前の段階が描かれ

  ていると指摘し、昨今のワーキングプア現象はそのフラッシュバック

  かと訝り、10年後のポストフーディズムへと思いを馳せられた。


(3)三つ目は「非正規労働の人」、通称フリーターの勤務状態に言及

  された。仕事中は、誰ともしゃべらず、仕事と生活を分離して、自分

  の気持ちをシェアする仲間がいない。秋葉原事件にも伺えた、人間

  的な接点を見出せない現代の病巣ともいえる面がはっきりと現代の

  労働現場には反映されていることを「希望格差社会」著者らしく糾弾

  された。


 映画「蟹工船」の最終場面で労働者が団結していく件を指し示しながら

今日の労働現場での団結の欠落した深層を突く。


「非正規の人がまとまってストを打てば、日本の経済は止まる。自分が

動けば何かが出来ることを確信し、怒りを溜めることだ」とさらりとおっし

ゃる。これは、山田昌弘先生の、非正規社員に対する挑発なのか。

 

山田昌弘先生は言う、「現代では、人間的な繋がりは誰しも消費の場面

でしか確認できなくなっている。同じ店に行き、同じような商品を購入する

場面にしか見出せないとは、なんとも軽くて寂しいことだが」と晦渋された

上で、


「消費の場面では、労働者と消費者が並存する。消費者は安くて、早い

ほうがいい。 労働者の部分と消費者の部分に折り合いをつけることが

求められているのだ。」ときっぱりとおしゃられた。

  

女工哀史、蟹工船の歴史を有する我々の歴史。こうした事実を辿るとき

現代日本の揺らぎに、懲りない人間の性を感じてしまう。なんとも遣り

切れなさが募るが、会社組織の目的から否応なく強いる現実が厳然と

存在するのは否定し難いことである。


精神論の強調よりは、システムで覆すしか方法はないはずだ。