溝上幸伸著「お客様はなぜ伊勢丹を選ぶのか」を職場への電車での
行き帰りを利用してほぼ1日で読み終える。
前著「伊勢丹はなぜトップブランドになれたのか」は読んではいない。
著者のプロフィールは55年生、経済誌の記者を経て、
現在は流通業を中心としたフリーのライターとのことである。
確かに、伊勢丹の百貨店業界での優位性を論ってはいる。
しかし、余りに上面をなでているだけとの感は否めない。現場に肉迫して
ないことはもとより、伊勢丹を担っているはずの現実の人間が全くといって
いいほど出場してこない。どんな取材を通じてこの本をまとめたのか、
どんな思い入れをもってこの本を上梓したのか。
要は、伊勢丹だけが、唯一「お客様第一主義」の基本がが徹底されている。
他の百貨店は、それができていなく、テナントや卸業者にまかせきりにな
っているだけだと言い切っているのである。
ファッションの伊勢丹、BPQC,メンズ館、「解放区」、「ニューズスクエア」
、単品管理システムも全て表面的な指摘だ。
著者の伊勢丹への思い入れ、百貨店への期待、どれをとっても希薄である。
伊勢丹に対置する三越についても、稚拙な見解である。
伊勢丹の提灯持ちにもなっていないのではないか。
現在の消費者、生活者の志向するライフスタイルがつかめていない上に、
30年以前の頃のストアーズレポートの類でしかない。
この著者の、この本を出版した狙いはどこにあるのであろうか。
伊勢丹の名前を出せば、本が売れるとでも言うのだろうか。
単に、出版社の依頼に応じているに過ぎないのか。
読後、私の心は、深い、深い、不快の念に包まれたのだ。