今度滝行に行きませんか??

何年か前に、ビジネス誌の編集長である知人とお酒を飲んでいる時、唐突に誘われたのがきっかけだ。

自分は宗教とかスピリチュアル系には縁遠く、年末にお寺に行って正月に神社にお参りに行く程度だが、欧米では宗教と関係なく、坐禅や瞑想を行う人が多く、かのスティーブ・ジョブスなどのビジネスエリートも、実践していたことでも有名だ。日本でもマインドフルネスがよく紹介されているが、これは仏教の瞑想法を医学的にアレンジしたもので、臨床の場でも活用されている。

かくいう自分も、以前うつ病を患った時に医師から勧められて、マインドフルネスを実践していた経験があるが、滝行は初めてだった。

早朝に集合場所に行ってまず驚いた。参加者は全員で20名くらいいたが、半分が女性で、しかも20代、30代の若い女性。見た感じもごくごく普通の人たちで、何かを思い煩っている感じではなく、単純に興味があるので参加したという人が多かった。長い間多くの人が実践していることなので、何か言葉にできない体験があるのではないか?と言うのが理由のようだった。

一行がバスで向かったのは、栃木県にある出流山万願寺


麓のお寺から10分程度山を登ったところに滝があった。高さは34m程度だが、思った以上に水の量が多く、しぶきが激しく舞っていた。たまに流れてきた流木にあたり怪我をする人もいるらしい。さすが荒行だ。少し不安を感じながら、小屋で滝行用の衣装に着替えた。男性は白いふんどし一丁、女性は水着の上に白衣を羽織るスタイルだ。

指導してくれたお坊さんに連れられ、まずは男性陣から列を作って滝に入ったが、水が想像以上に冷たい。この時は夏でうだるように暑い日だったが、水は氷水のように冷たく、数秒で痛くなるほどだ。

あまりの冷たさに、

「うぉぉぉぉ」

など声が出たが、そうでもしないと我慢できないほどだ。しかも行は一人一人行うので、自分の番が来るまで待ってなくてはならない。

ようやく自分の番になり、お坊さんが行の仕方を教えてくれた。まず水圧が強いので受け方が悪いと怪我をしてしまうので、最初は頭頂ではなく肩の部分で受けるように指導された。

 

滝壺に入った瞬間ものすごい衝撃で吹き飛ばされそうになった。滝にうたれている間、真言を唱えるのだが、あまりの衝撃で頭が真っ白になり、立っているのがやっとだった。しばらくして、お坊さんに連れらて滝から上がった。時間にして1分か2分程度だと思うが、ものすごく長く感じられた。

滝行を終えた人は、焚き火を囲んで暖をとっていた。水の冷たさと強烈な衝撃の後に、焚き火の温もりを感じていると、サウナでいうところの「整った」感覚になる。

続く