女性はカミラに、バッグをひとつ助けてくれないかと請うた。
見るからに重量のありそうな大きなバッグだったが、カミラ
にも荷物がある--が、彼女は出航までの数時間、街を
ぶらつくだけのつもりだったし、何より2度と父の家には
戻らない覚悟で飛び出してきたわりには、持って出たのは、
小さなバッグ唯ひとつ--
失意から自暴自棄になっていた証・・
他人の荷物のひとつやふたつ、どうにでもなりそうな軽装
だったが、カミラは余計な事はしたくない、ひとりになりたい、
と思っていた--
けれど、女性が修道服を身に付けた
尼僧
であったことから、無下に断ることを躊躇った。
年の頃は、カミラより10歳ほど上だろうか--見るからに細身の
シスターにとって、苦行とも思える2つの鞄。
比して彼女より若く、体格もがっちり型のカミラが荷うことは、苦も
ないこと--
シスターは、さすがに、2つとも引き受けようとしたカミラに気が
引け、ひとつだけは自身が担ったが、更なる要望を願い出た。
自分の寝起きする修道院は近く、馬車など使わなくともよい
距離にある、時間が許すようなら案内するので、どうか
そこまで運んでほしい・・と。
カミラは、馬車に乗せるまでの束の間のお手伝いと思っていた
ものが、さらに自由を拘束するような注文をしてくるとは、なんと
あつかましい修道女--!
イラっとしたものの、相手は神に仕える身、自分もカトリック信者
--否とは言えず、出航までには少なくとも戻れるだろうと思い、
渋々頷いた。
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