息子と王座に並び、様々な役職の人々の訴えに耳を傾け
そして結論を迫られる--
側近に相談すれば片付く内容なら悩むことはない、が、
統治者でなければ出せない答えもある。
そんな時は、記憶にある両親の手法を使ったりもした。
両親は、占い師などに頼ることを嫌い、占いゲームのような
ことをして、自ずから答えを導き出そうとしていた。
藁にもすがるような思いのアンケセンにとって、手法の是非を
斟酌する余裕はない--まして、両親が実際に行っていたのだ・・
陳情に答えるばかりではない、公共施設建設現場の検分、そして
その中には無論、ファラオの神殿も含まれていた。
ある日、兄の霊廟となる王墓の現場監督が陳情に現れた。
褐色の肌、30才手前ぐらいに見えるその青年は、神殿の働き手が
農業をしつつのWワークなので、収穫時期になると人手が不足、
実際、工期も遅れ始めている--先王に対する敬愛の強さから、
自らの責任を問い、その遅れを取り戻したいと訴えた。
陳情に対して、アンケセンはいつも
兄ならどう答えるだろう?
と考える。
兄ならきっとこう言うだろう--
自分の墓など急ぐことではない、構造の土台は、すでに
美しく仕上がっているではないか。
農民を必要以上に駆り出してはいけない、急ぐでない--
と・・
青年にそれを伝えると、彼は大いに感銘を受けたようだった。
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アンケセンは建設途上の墓を、息子を連れてしばしば
訪れていた。
それは、ファラオの血を絶やさないと誓った事を再確認する
ためと、摂政としての責務の辛さを聞いてもらうため。
そして息子に、父の生前の話をし、魂を感じてもらうなどの理由
があったから--
そこで心を落ち着かせることができた・・

