そんなある日--季節は冬
ただでさえ寒いのに、陽が落ちた後の町並みは、凍えるような
空気に支配される。
旦那さんから使いを頼まれたその帰り道、手に温かい息を吹き
かけては先を急ぐトラジ--
自分の店まであと数軒と迫った頃、とある商店の店先に出されて
いる火鉢に目が留まった。その火鉢の周りで暖を取る数人の若者
の中に、顔見知りの奉公人を見つけたので声を掛け、自分も温ま
ろうと近づいた。
すると、彼の表情がいつになく硬い--
よく見ると、他の者達も同様の表情をしている・・
不審に思い、何かあったのか尋ねてみると、顔見知りが答えた。
--少女が行方知れずになっている
なんでも、今日のいつ頃かはわからぬものの、両親が気づいた
時には、どこを探しても居なかったので、人を頼みあちこち探した
が、未だ行方が分からない、とのこと--
彼らは、捜索する人達のため、また、少女が無事帰ってきた時
のために火鉢を用意して待っているのだった。
--トラジは、その場にへたり込みそうになる自分を、必死に
抑えた。
そして何かしようにも胸が苦しく、動くこともできなくなってしまう
のだった・・・

