トラジと少女(5) ~ 先輩はイケメン | 前世の記憶を辿る Past life memories

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元ブログ『前世の記憶』の続き。
前世の記憶では前世以外のカテゴリーも様々書きましたが、本ブログは、
前世関係に特化させたいと思っています。

 

トラジがまだ丁稚の頃、あこがれの先輩がいた。

丁稚奉公を始めて間もないトラジより、2~3才年上の、今なら

中学生ぐらいの年頃の少年だ。

 

イケメンでそろばんも得意、頭の回転も速く、将来の番頭候補

の筆頭だった。キラ星のごとく輝く少年を追い抜くことは不可能

と知りながら、彼のようになれたら--と夢想する毎日だった。

 

ある日、その先輩がトラジを手招きする。

忙しい仕事の合間を縫い、先輩が招くひと気のない場所に向かう--

仕事で話すことはあっても、個人的に会話したことがない先輩に

呼ばれたことを不思議に思ったが、あこがれる気持ちから、嬉しさ

の方が勝る--

 

先輩はトラジをキラキラした瞳で見つめると、赤い布に包んだ何か

を差し出し、それをトラジの両手に押し込む--布の端から覗いた

のは、女性の かんざし の一部だった。

何が何だか分からないトラジに、少年が告げたのは、時々店に顔を

出す別の商家の同じく奉公人の少女の名前だった・・

 

トラジは天国から地獄に落ちた気分だった--

 

イケメンだった先輩の事、モテていたことは容易に想像はつくものの、

将来の番頭候補で、二人といない優秀な少年が、禁じられていた

恋愛沙汰に係わろうとするなんて・・!

旦那さんに知れたら、彼の未来はその瞬間閉ざされる--

 

躊躇するトラ--しかし気の優しい彼に、それを跳ね付ける勇気は

なかった・・

店の中での仕事が多い先輩に比べ、外との出入りが多いトラジなら、

気づかれる確率も低い--身動きの取れない先輩は、気の良いトラ

を仲介に使うことにしたのだ・・・

 

 

が、こんなことは長く続かない--間もなく先輩の規則破りが明るみ

に出ると、即日ヒマを出されることになった。そして共犯のトラジは・・

旦那さんの大岡裁きにより、不問となった。

 

--将来をこのような形で棒に振った先輩は、彼だけではなかった。

正直に、真面目に日々を送っていれば、出世の道を楽に歩むことが

できたはずなのに、何人もの先輩が、女性問題、または賭け事に溺れ、

輝かしい未来を自らの手で失っていったのだ・・・

 

なので、トラジは過当競争をのし上がってきたと言うよりは、先輩達が

次々と脱落していったために、残ったにすぎない。

但し、旦那さんはそれを過小評価しなかった。

彼には美点がいくつもあることを重く見た。

実直さや正直さ、そして何より彼の努力を買ったのだ--