米国の少女と夫は出かけた--楽しそうに寄り添い・・
二人を見送ったヒサは、その後奥さまの編み物を手伝う
よう言い付けられた。--手伝うといっても、解いた糸を
両腕に巻き取っていくだけの事なのだが。
奥さまは黙りこくっている。
ヒサも、口を開くことなく、ひたすら糸を巻くことに集中していた。
なによりこの時、奥さまの胸の内を想像することさえできない
年齢ではあった。
奥さまの心中は、如何様なものだったか--
勿論、夫と妖艶な少女の事で心は占められていた。
様々な想い--嫉妬、憎しみ、絶望・・
自暴自棄になりそうな自らを、暴走しないよう抑えることだけで
精一杯、目の前に居るヒサの存在など、全く眼中になかった。
奥さまとその夫との間に、子どもはいなかった--できなかっ
たのだ。
夫の収入で生活に困ることはないけれど、常に負い目を感じ
ていなければならない日々--
さらにその苦しみを増幅させるような、夫の行い・・
--この時、奥さまは気づいていなかった--黙々と仕事に
打ち込むヒサの姿が、彼女の心を落ち着かせてくれていた
ことに・・


