声楽の女性教師は、マリアの才能を伸ばそうとしながらも
重点を置いていたのは、基本。
発声練習、ソルフェージュ・・等だろうか。
とにかく、基礎練習の大切さを教えた。
例え、マリアがそれに対して不満を言ったとしても
--歌う時間より、基礎練習に費やす時間の方が長かった
にも拘わらず、マリアはそれを苦痛に感じることはなかった。
そのため、実際には不満を訴えることはなかったのだが--
この厳格な教師は、一切聞き入れなかっただろう。
彼女は、低音域の曲も好きだった。
音域が広いため、その音域の歌を歌う能力があるからこそ
ではあったが、自身の能力の可能性を広げてくれる
曲に対して貪欲であるという動機が、チャレンジ精神を育んで
いるようなものだった。
みっちりと基礎練習を積み重ね、才能の芽をすくすくと伸ばした
マリアに、その実力をお披露目する機会がようやく訪れる。
それは、声楽や楽器を学ぶ若いお嬢様、お坊ちゃま達の大会--
今で言う『コンクール』のようなもの。
但し、14才になるマリアの年齢は、参加者達の中では少数派に
属していた。
