京都に到着した彼らを待っていた組織--
そして彼らの仕事とは--組織のトップが陣笠を目深に被り、素顔を露わに
しない、その様子からも推測できるように、陽の目を見ることのないものだった。
--事前情報を頼りに、闇に紛れてターゲットを仕留める--
彼らは命ぜられた役割を全うするだけ--ターゲットの素性も、命を奪う理由も
一切明かされることはなかった。
が、『お上』からの指令は 絶対 --ましてや、武士の身分でもない彼らが
対等に与せる相手でもない。
浮かれた気分も吹き飛んだ彼らは、無我夢中で仕事をこなしていった--
そんな中、勃発したのが冒頭の事件だった。
その時点ですでに、2、3件の仕事を経験している--そんな時だった、他の
エリート剣士達と同様に立ち回っていた寿三郎に、突如
配置転換
が命ぜられる。
それは、斥候としての役割、そして情報収集に伝令というものだった。
--寿三郎は驚いた。
それは表舞台の仕事ではなく、裏方のすること--自分の腕(剣の腕前)を
発揮することはない。
いったい何のために剣の修業をしてきたのか・・・!
思い通りに生きたい寿三郎にとって、それは損な役割で、価値も無いことに
思えた。
憤る彼の耳に、配置転換を命じた人物の正体が告げられる--それは、陣
笠を被り、素顔もまともに見たことのない組織のトップだった・・・
--剣士達の仕事は、彼らだけで成し遂げるのが難しい場合も多く、大抵の
場合、トップ配下の別部隊が援護に駆けつける。
それでも、彼自身が現場に姿を見せることはない--
が、何度かに一度、その存在を敢えて世間に示すかのごとく姿を現すことが
あった。
寿三郎はその時、彼の威風堂々たる風情に不思議な感銘を覚えた記憶がある--
半ば故郷(くに)に帰ろうとすら思っていた気持ちを翻意したのは、このトップの
意思と知ってからのことだった・・・
