幕末を駆けた青年(3) 急襲 | 前世の記憶 ~Past Life Memories~

前世の記憶 ~Past Life Memories~

占い師や精神科医に頼ることなく、自力で前世を蘇らせる方法。

他 映画、音楽、スポーツ関連記事も書いています。


狭い部屋の中で、ロウソクの灯りを頼りに、5~6人の男たちが真剣な

面持ちで、畳の上に置かれた図面のようなものを凝視している。


彼らは、Mさんの前世の青年--仮に名前を『寿三郎』とする--

の『19歳』よりは年長だった。

その図面らしきものを記憶させようとしているのか、全員無言でいる。


一番年若い寿三郎は、しかし、その図面にあまり集中していなかった。

--今にも襖が蹴倒され、敵が乱入してくるのでは、と戦々恐々として

いたからだ・・・


いつでも剣が抜けるよう柄に手を掛けているのは、そんな警戒心

に拭えないでいるからだった--そしてそれは自分が、年上の彼ら

ように肝が据わっていないからだと、寿三郎は思っていた。


--が、今回は、そんな気のせいばかりではなかった・・・襖の向こう

から複数の足音がしたかと思うと、寿三郎の想像した通り、襖は蹴破

れ、場所の事は漏れないと安心しきっていた年長の仲間たちを動転さ

せた。






気のゆるみ--それが、一瞬の間を作った・・


しかし、気のゆるみから年上の仲間ができていなかった準備が、寿三郎に

できていた。

右腕を切られたが、咄嗟に飛び上り、あっという間に廊下に飛び出し、荒々

しい足音、怒鳴り声やうめき声を背に外の暗闇へと向かったーー


ひとりだけ、逃げおおせたと思われる仲間の足音が、後ろから聞こえてきた

が、とにかく彼の足は速かった。背後の足音は次第に遠ざかり、寿三郎は

とある、定められた場所へと辿り着いた


と、ほとんど同時に、闇を切り裂くような指笛--援軍だった・・・