狭い部屋の中で、ロウソクの灯りを頼りに、5~6人の男たちが真剣な
面持ちで、畳の上に置かれた図面のようなものを凝視している。
彼らは、Mさんの前世の青年--仮に名前を『寿三郎』とする--
の『19歳』よりは年長だった。
その図面らしきものを記憶させようとしているのか、全員無言でいる。
一番年若い寿三郎は、しかし、その図面にあまり集中していなかった。
--今にも襖が蹴倒され、敵が乱入してくるのでは、と戦々恐々として
いたからだ・・・
いつでも剣が抜けるよう柄に手を掛けているのは、そんな警戒心を常
に拭えないでいるからだった--そしてそれは自分が、年上の彼らの
ように肝が据わっていないからだと、寿三郎は思っていた。
--が、今回は、そんな気のせいばかりではなかった・・・襖の向こう
から複数の足音がしたかと思うと、寿三郎の想像した通り、襖は蹴破ら
れ、場所の事は漏れないと安心しきっていた年長の仲間たちを動転さ
せた。
しかし、気のゆるみから年上の仲間ができていなかった準備が、寿三郎に
はできていた。
右腕を切られたが、咄嗟に飛び上り、あっという間に廊下に飛び出し、荒々
しい足音、怒鳴り声やうめき声を背に外の暗闇へと向かったーー
ひとりだけ、逃げおおせたと思われる仲間の足音が、後ろから聞こえてきた
が、とにかく彼の足は速かった。背後の足音は次第に遠ざかり、寿三郎は
とある、定められた場所へと辿り着いた。
と、ほとんど同時に、闇を切り裂くような指笛--援軍だった・・・

