いつもなら、『顔』 から視えてくるものを待つ。
しかし今回、切り取られた記憶のような映像のひとコマが、まるでフラッシュバック
するように現れた・・
ーーそれは、凍った石畳の上、向かい合ってしゃがむ親子の姿ーー
凍りつくような寒さの中、子どもは6~7才ぐらいーー揃いの布で作ったと思われる
濃紺の衣装は色褪せていたーー
母親のドレスの裾から、ブーツの先が覗いている・・
衣装の雰囲気からすると、ロシア・・?だろうか。
母子だけで、父親の姿は見えない。
持ち物らしいものもなく、じっとしているーー
ーー裕福そうにはとても見えない二人は、日々の食も満足に得られない。
あまりにも哀しい境遇ーーそして、次に見えてきた映像に、息を呑んだ・・!
それは、何故この親子が、日々の糧にも窮していたのか、そして何故しゃがんでいたのか
その理由を明らかにするものだったーー
それは、最初に視えた映像の数年前ーー季節は、暖かい春だった。
荷車に腰掛け、母は快活に笑っている。
ーー楽しい旅ーーそう見えた映像は、実はそうではなかった。
・・荷車で引かれていた理由は、その足を自力で動かすことができないからだったーー
