朝目覚めると台所で炊飯器か
らご飯の炊ける甘い匂いがし
てくる。流し台のまな板の上
では、トントンとワケギを刻
む音がしてくる。眠い目をこ
すりなら台所に行くとチャボ
の玉子取ってきてと母が言った。
庭のニワトリ小屋の隅に生ん
た2個の玉子を待って台所に
行くと母がそれを溶かした味
噌汁の中に割り入れた。最後
にワケギをちらしして味噌汁
の出来上がりだ。
おかずは高菜に黄色の大根の
漬物でシンプルだが忘れる事 の出来ないお袋の味だ。
50年前に神奈川に旅立つ日の
朝、母が作ってくれた出世味
噌汁だった。