「夢のために」11もやしで済ませ…親の援助なくコロナで困窮する専門学校


新型コロナウイルス感染拡大の影響でアルバイト先の飲食店などが営業を自粛し、親の援助が受けられない学生の困窮が深刻化している。この春、児童養護施設を巣立ち専門学校へ進学した名古屋市のカナさん(18)=仮名=は家賃や生活費に加え学費もアルバイトで工面する予定だったが、日々の生活にも行き詰まり退学の危機にひんしている。カナさんは小学3年生から施設で暮らしてきた。母が家を出て行き、父は残された子供4人を施設に預けた。今は全く連絡を取っておらず、「親はいないものと思っている」。「退所後も1人で安心して暮らせるようにしたい」と、高校時代はアルバイトに明け暮れ、少しずつお金をためてきた。

 転機は高3の夏。施設での生活に悩んでいた時、児童相談所(児相)の職員が親身になって話を聞いてくれたことをきっかけに、「同じような境遇の子どもたちに道を示せるようになりたい」と児相で働くことが目標になった。また、自身の経験を生かして児童養護施設や乳児院に勤めることも考え、社会福祉士や保育士の資格が取れる専門学校に進むことを目指した。

 施設では高校卒業後に進学した子供はおらず、手探りで情報を集めて受験勉強し、合格。入学金や前期の授業料、引っ越し代、家賃など計100万円を超える初期費用は全て貯金で賄った。資格取得のため大学の通信課程も同時に受講する必要があり、入学後も学費が重くのしかかるが、アルバイトとの両立が過酷になることも覚悟していた。「私にとって初めてできた夢。なんとしてもかなえるつもりだった」

 しかし、3月に始めたアルバイト先の飲食店は感染拡大の影響で休業。このままでは5月中にも貯金が底をつくため、食事は安い麺類やもやしを使って1日1食で済ませ、「食感が欲しいときはちくわを食べている」という。

 融資制度を利用しようと役所や社会福祉協議会に相談したが、未成年者で親の同意が得られないことを理由に断られ、申請できたのは有利子の貸与型奨学金のみ。カナさんの学校は給付型奨学金の対象外で、「借金として残る負担は大きい」。

 いくつも面接を受け、今月やっとチェーンの弁当店でアルバイトが決まった。国から給付される10万円も貴重な収入だ。ただ、後期の学費分までためられる見通しは立っていない。「このまま夢を諦めなくてはいけないのか。不安で不安でしょうがない」