冷静になって考えたいPayPay「100億円あげちゃう」に潜むリスク

石川 温『石川温の「スマホ業界新聞」』



Apple PayやLINE Pay、PayPayをはじめとした様々なサービスが、シェア争いでしのぎを削り合う電子決済サービスの世界。「どのサービスが一番良いのか」をひとつ選ぶのは非常に難しい状況ですが、そんななかでケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さんが訴えるのが、「個人情報はどう扱われるのか」という視点。「手数料無料」や「ばらまきキャンペーン」の裏にはどんなリスクがあるのかを、自身のメルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』で紹介しています。

PayPayが100億円あげちゃう第2弾キャンペーンを発表━━決済サービスのビジネスモデルは「手数料」それとも「個人情報」かそこで感じたのが、QRコード決済とApple Pay、どちらがユーザーにとって有益なものなのか、という点だ。使いやすさという点では、いちいちアプリを立ち上げる必要がなく(Suica以外はカードを選ぶ必要があるが)、さっとかざすだけで決済が完了するApple Payが便利だろう。一方で、店舗に導入しやすいという点では初期投資がほとんどかからず、決済手数料も無料なことが多いLINE PayやPayPayに軍配があがる。

しかし、そういった「決済手数料が無料」ということは、事業者としては決済手数料ではないところで稼ぐ手段がなくてはならない。

先日、100億あげちゃうキャンペーンの第2弾を発表したPayPayは、いまだにビジネスモデルについて語っていない。

一方、LINE Payにおいては、店舗とユーザーを決済で結ぶことで、店舗側はユーザーに対して、広告メッセージやクーポン、さらに会員証的な機能を付与することが可能になる。

つまり、LINEとしては、こうした広告料などの手数料で稼ぐことができるというわけだ。決済手数料を取らない代わりに、他社には真似できない、ユーザー接点を創出することが稼ぎ頭になるのだ。

おそらくPayPayに関しても、ソフトバンクやヤフーなどの顧客接点と店舗をつなぐというビジネスモデルを考えているのではないか。

一方、ApplePayはSuicaやiD、Quicpayといった決済プラットフォームがベースだ。そのため、店舗側は決済手数料を支払う必要がある。しかし、ユーザー側にとってみれば、個人の情報などが隠された状態で決済できるというメリットがある。

アップルのサイトでは「Apple Payで使われるクレジットカード、デビットカード、プリペイドカードの元のカード番号を Apple が保管したり入手したりすることはありません。Apple Pay でクレジットカード、デビットカード、プリペイドカードを使う際、個人を特定できるような取引情報を Apple が収集することはなく、決済はユーザ (利用者)、加盟店((App 内や Web 上で支払う場合はその開発元)、カード発行元の三者間で完結します」とある。

ウェブ上での決済においても、全て暗号化され、クレジットカード番号情報がウェブやアプリに送信されることはない。

これはグーグルなども一緒だが、無料で便利に使えるサービスは個人のプロフィール情報が広告などの価値に変わるからこそ無料なのであって、一方で、有料のサービスであれば、個人の情報は守られやすいということにもなる。

ユーザーが個人情報を開放するからこそ、決済手数料が無料というQRコード決済が相次ぐ中、「個人情報の扱いはどうなるのか」という視点で、決済サービスを選ぶというのも一つの考え方と言えそうだ