売春を強いられる世界一貧しい国の女性たちを救ったのは日本人の意外な方法だった
日本の女性は、メイクをすることは身だしなみの一つとして考えていると思います。しかし、途上国ではメイク道具はおろか、尊厳すら持てない女性がいるのです。
そんな途上国の一つ、ネパールでメイクを通して社会貢献活動を行っている女性起業家がいました。
起業家・向田麻衣さん

出典 http://ow.ly
向田さんは、現在ネパールで人身売買の被害に遭った女性を対象に、化粧品やメイクアップのワークショップを開催することで、社会貢献活動をしています。メイクで社会貢献?と疑問を持つ人も多いかと思います。そこで今回は、向田さんが活動を始めるきっかけや、現地での活動についてTED×Sapporoでのスピーチを中心に紹介します。
きっかけは15歳の時に行った講演会

出典 http://www.gettyimages.co.jp
向田さんは、15歳の時にネパールのNGOで働いていた方の講演会に行き、そこで世界には様々な貧困があると知りました。そして、自身もネパールに行って何かがしたい、と思った向田さんは2年後に単身でネパールへ渡りました。
ネパールで受けたカルチャーショック

日本を発つ前に、水に気を付ける、衛生的でないものを食べるとお腹を壊すなどの情報は聞いていたものの、実際に目にしたネパールの人達を見て、向田さんの価値観は崩壊したそうです。
助けなければいけないと思って来たものの、ネパールの人達が幸せそうに見えたため「本当に支援が必要なのか?」と疑問を抱くようになったからです。
どんな支援が必要なのか、分からなくなった向田さんは、大学生の時にアジア10カ国を回り、NGOに支援を受けている人にインタビューをすることにしました。
「何でもしたいとしたら、何がしたい?」

「何でもしたいとしたら、何がしたいですか?」とシンプルな質問をしたところ、多くの女性が「メイクがしたい」「オシャレをしたい」と答えたそうです。そして、向田さんの私物の化粧品を欲しがったり、メイクをして欲しいと懇願したのです。
相手の女性が高校生くらいの年齢であろうと、切実なニーズだと感じた向田さんは、日本に帰国して化粧品を携え、再度ネパールへ飛びました。
メイクで元気になった一人の女性

向田さんは、ネパールでメイクのワークショップを始め、訪れたシェルターで、目の焦点も合わず、シェルター内を徘徊している女性と出会いました。
その女性は、皆で輪になってメイクをしている様子を、遠くから眺めているような状態だったそうです。

次の週、その女性はワークショップの輪の近くに来ることができ、その次の週は輪に入ることができました。当時、まだ言葉を話せる状態ではなかったようですが、向田さんはスタッフと相談して、彼女にメイクをすることにしました。
そしてメイクが終わり、鏡を渡すと、それまで視線の定まらなかった彼女は、しっかりと鏡を見て向田さんに「サンキュー」とお礼を言ってくれたのです。
メイクによって、言葉が話せないくらいに傷ついていた女性が、少しでも元気になれたことに、向田さんは驚いたと仰っています。
求めているのは幸せだと思える“瞬間”なのでは?

向田さんは、TEDのスピーチの中で疑問を投げかけていました。
私はこのプロジェクト、この活動にコフレプロジェクトという名前をつけて今も活動しています。主に途上国といわれる国で女性たち、とくに心が傷ついた女性たちにワークショップを実施しています。そして自分たちに自尊心を取り戻す、そんなお手伝いをしています。
お化粧するのは、本当に一瞬のことですよね。化粧品は食べられません。そんなものが何の役に立つのかと男性の多くは思うのではないでしょうか。
でも、私は皆さんに聞いてみたいです。人は食べていけたら幸せですか?お金があったら幸せですか?生活が安定しているっていうのは、本当に幸せなんですか?
答えは様々だと思います。でも私が、この短い30年の人生ですけれども、これだけは確かだと言い切れることがあります。
それは、途上国とか、先進国とか、女性とか男性とか、レズビアンだとかゲイとか、そんなこと関係なく、人はみんなきっと美しい瞬間を欲しいと思っていることを。
それは、生きていてよかったなと思うような、嬉しい瞬間。そういう瞬間がみんな欲しいんじゃないかということです。
メイクできれいな自分になれるのは、一瞬のことかもしれません。でも、その一瞬のことが生きる希望になるのでは?と問題提起しています。
自分のために化粧をするようになった女性達

出典 http://www.gettyimages.co.jp
私が普段おこなっている、美しい瞬間っていうのは、お化粧をしているとき。私が普段支援してる女の子たちに、お化粧をするというのも、その美しい瞬間のひとつなんじゃないかなという風に思っています。
彼女たちはそれまで、売春宿で働かされて、そこで客のために、自分を買う男のために化粧をしてたんですね。その女の子たちが今、自分のために自分を愛する為に化粧をしています。
その女の子の小さな変化、そして彼女たちが今、掴みかけている可能性。彼女たちが今、外に出たいとか、喋りたいとか、もっともっと、外に出て自分を表現出来るんじゃないか。そういうことに気づき始めた彼女たちの可能性をもっと開かせたいなと。そう思って、私たちコフレプロジェクトは仕事を作ることに決めました。
お金のためにしていたメイクが、自分のためにする行為になり、きれいになったことで自尊心を取り戻すきっかけになるのは、素晴らしいことではないでしょうか。
そして、そういった女性達に活躍の場を提供するという、新しい取り組みも始まったのです。
売春以外の手段で、収入を得る機会を

2013年に、向田さんは化粧品ブランドを立ち上げました。そして、商品のパッケージを作っている女性の中に、人身売買の被害に遭った女性も含まれているとのこと。中身のバスソルトや石鹸を作っているのは、主に貧困層出身の読み書きが出来ない女性達だそうです。
売春以外の形で、収入を得る機会を提供するのも、大事な支援活動なのではないでしょうか。
そして、「手に職を付ける」ことの大切さについて、向田さんが次のように言及しています。
生きていくために、また売春という方法しか選べない少女もいます。そのため、シェルターにいられる約1年半の間、彼女たちにとってもっとも必要なのは、再びセックスワーカーとなる以外の選択肢をみつけること、すなわち「手に職をつけること」です。
化粧体験ワークショップを行ったことで「ビューティシャンとして独立したい」と願う女性が増えてきました。実際、女性の社会進出が進むネパールで美容室の仕事にたずさわる人も増えていきます。
現在、シェルターにサロンスタッフを派遣し、職業訓練を行う活動も展開されています。夢を叶える女性が増えていくといいですね。
「世界一貧しい」と言われる国に、夢みたいな瞬間を

向田さんの活動は、当初誰にも理解されませんでした。「メイクをすることが、何の役に立つ?」と。しかし、結果として女性達の才能を開かせるきっかけになりました。
スピーチの最後に、向田さんが既存の支援活動と、自分の支援活動の違いについて語っています。
私は今の既存の支援というのは、わかりやすいことや、短期的に結果がでることに、そういうことに偏っているんじゃないかという風に感じます。そのほうが支援者が集まるから。そのほうが応援されやすいから。そのほうがお金が集まるから。でもそれって、何だか少し、せせこましいなって思うんですね。
