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東京都が、豪ドル建てで個人向けの都債を発行することを決定した。東京都が個人向けの外貨建て債を発行するのはこれが戦後初。舛添要一・都知事が目指す「東京の国際金融センター化」の一環だというが、いまなぜあえて「豪ドル建て」で、かつ「個人向け」の都債なのかと疑問に思う人は少なくないだろう。

先に結論をいえば、これは証券会社の口車に乗った話であり、とてもじゃないが東京を国際金融センター化する方策とはいえない。

まず、舛添知事の記者会見での発言を見てみよう。

「現時点の市況では利率3%程度が見込まれておりまして、同じ期間の円貨建ての個人向け国債の利率0・1%程度と比べ、為替変動リスクはありますけれども、はるかに高い利回りが期待されます」

一見してわかるが、これは証券会社のセールス・トークそのものだ。

言い訳程度に「為替リスク」に言及しながら、「名目金利差」を強調する手口で、投資家にとっての有利性だけを強調している。投資家が有利であれば、その分発行者の東京都が不利になるはずだが、そのことについては一切語られていない。

そもそも、発行者の東京都が外貨建て債券を発行する確かな理由はない。

海外展開する企業であれば外貨建て資産を持つことがあるため、そのヘッジのために外貨建て負債を持つのは合理的といえる。しかし、東京都の場合はバランスシートを見ても外貨建て資産は見当たらない。それなのに、外貨建て負債をなぜ持つのか、よくわからない。折しも、舛添知事は、東京都を国際金融センターにすると口走ったために、証券会社の営業に引っかかったのだろう。

今回の都債の購入対象者は東京、千葉、神奈川、埼玉に在住する個人などとされているので、あえて外貨建てにする必要はない。資金調達したいのであれば、普通に「円建ての都債」でいいわけである。

無用な為替リスクを投資家の個人も発行者の東京都も負うのであれば、そのための無用なコストを金融機関に払うだけ。間に入った金融機関にとっては投資家と発行者の両方から稼げるので、これほど「おいしい」商売はないともいえる。

もともと、地方自治体は金融知識に疎く、証券会社等が荒稼ぎできるところだ。今回は、そこに舛添知事の国際金融センター化発言があって、さらに証券会社を奮い立たせて、トンでもない商品ができあがった形といえる。

舛添知事は、もう少し金融を勉強したほうがいいだろう。東京を国際金融センターにするには、このような外貨建て都債の発行ではなく、東京都が保有していながら有効活用されていない資産30兆円の証券化がもっとも有効だ。

30兆円すべてとは言わないが、資産から負債を引いた正味財産約23兆円のうち都の官僚や彼らの天下りのために使われている資産を売却・証券化すればいい。同時に東京都の業務の一部を民営化すれば、東京が国際金融センターになるだけではなく、東京都の資産を民間で活用できる。

30兆円というと、並の国家より巨大な資産を、地方政府で抱えていることになる。そうした資産を証券化すれば、東京は国際金融センターの名に恥ずかしくない存在になれるし、しかも、天下り問題の解決にもなる。

こうした抜本的な解決策を示せるか、それとも証券会社の口車に乗った「トンでも話」をこのまま進めるのか。舛添知事の真価がいま、問われている。