天職だと思えた訪問診療から遠ざかって早三年。今思えば医師になった頃、訪問診療に関わるなんて夢にも思わなかった。

 

もともと福祉と医療を繋げる医師になりたかったのだから、訪問診療医になったのは必然だったのかもしれないけれど、これほどやりがいのある毎日はなかった。
初めは右も左も分からなかったけれど、何度も何度も壁にぶつかり、その度に懸命に学んだ。
しかし、そこには医療だけでは解決できないことが多々あり、役所に電話してもはっきりとした答えももらえず、ありとあらゆる職種の方々に教えてもらえた事が大きかった。
介護保険のことが分からず、ケアマネージャーの勉強会などに顔を出すと、決まって言われることが「お医者さんに来ていただくなんて」とか「医師で来たのは先生が初めてです」といった声ばかりだった。
訪問診療の合間に時間があると、訪問薬局や訪問入浴、ヘルパーの事業所などに立ち寄って話をしたけれども、皆初めは驚いていた。そして、多くの他職種の方々から言われたのが、患者さんも自分達医療福祉職も在宅で安心して過ごせない、ということ。
私が出した結論は、誰もが24時間365日連絡して来ていいという体制を整えることだった。特に、在宅において一番多く入る機会が多いのは、ヘルパーさん。そして、訪問入浴など、その場で患者さんの異変に気づいたり、いつもと調子が違う時に、医師が即座に相談できる立場でないと患者さんを守れないと思った。
でもそんな私に対し、思ってもいない言葉が降りかかってきた。それは、訪問診療の医師の集まりに参加した時のこと。「よくそんなことができるね」とか、「そんなんじゃ倒れちゃうでしょ」といった話が出て、ついには「いかに患者に呼ばれないかが勝負でしょう」とか「いかに経費を抑えるか考えなくちゃ」といった言葉をかけられた。
しかし、現実は正反対だった。誰もが連絡できることで、逆に連絡が来ることは減った。むしろ誰もが早め早めに対応してくれることで、患者さんも悪化することなく素早く治療にあたれた。
そこには、信頼と安心があったからだろう。
自分と同じ考え方を持った医師は今まで二人しか出会ったことがない。その二人は、専門医も持っていなければ、役職がついている医師でもない。ただただ患者さんのことだけを考え、日々全身全霊で働いている医師だ。
私も、500人程度の患者さんしか寄り添えなかったけど、ご本人やご家族、そして関わる全ての職種の方々が安心できるよう、やれることをやってきたまでだ。
大した医者ではなかったけど。
どこの診療所も受け入れてくれない難病の患者さんや、在宅では厳しいと言われた患者さんも診させていただいた。
在宅での医療、ケアに限界はないと私は考えている。必ず診れる方法はあるはずと、ケアマネージャーさんや訪問看護師さんと何度も話し合った。
在宅に関わるあらゆる職種がチームとなり、患者さんやご家族のためにできる事は無限大。真のチーム医療がそこにある。

 

だから私はあきらめない。
もう一度、患者さんのためにとことん寄り添える訪問診療をしたいから。
自分が患者となり、その本当の苦しみを知ったから。
また歩けるようになるまで、今できる事をしたい。
難病や障がいを持って苦しんでいる人がたくさんいる。
駐車場や高速道路の障がい者割引、航空会社の対応など、様々な問題がある。
これを解決できなければ、医師になった意味がない。
苦しんでいる人々に力を貸せなくて何が医師か。
とことんまで医師としての志を貫き通す。
被災地支援もずっと継続していく。

 

今まで声を出せなかった皆さん、どうぞ私に訴えてください。
今まで耐えてきた皆さん、どうかこれからは私に共有させてください。
皆さんの声が社会を変えていくんです。
私は、皆さんの声を伝え、真にバリアフリーという言葉のない安心できる社会へと道を開いていきます。
皆さん、私に力をお貸しください。

 

私は必ず治る。
今はそうとしか思えない。