ブログネタ:ちょっといい話教えて
参加中かなり昔の事ですが、歌手のさだまさしさんが出されたアルバムに「夢供養」と言うのがございした。
どんな曲が入っていたのか・・・
親友のお宅で伺ったものですから・・・
平成20年12月22日・・・神奈川県にございます江ノ島電鉄株式会社で世にも珍しい・・・と申しますか・・・
「鉄道屋の粋・経営者の心意気・父親の愛」
が詰まった、一枚の辞令が交付されたと報道各社が静かに伝えました。
辞令は、深谷研二社長名で直接「代理人」である56歳の男性に、社長自らが交付したものでございます。
「新田朋宏、鉄道模型運転士を命ずる」
鉄道会社が鉄道模型の運転士を任命する、なんて、前代未聞で・・・
勿論、鉄道事業法上からも・・・
労働基準法上からも・・・
何の権利も拘束力も無いのですが・・・
この奇妙な辞令は、世界中のどんな勲章より彼本人にとっては名誉であり、幸福でありするもので・・・
そしてここに「粋」と「愛」が黄金の輝きの放っているのを、
誰より本人が全霊で受け止め、認識しておられると確信します。
新田鉄道模型運転士は、
平成10年11月、拡張型心筋症で16年の短い生涯を終えられております。
この故人への「辞令」・・・
まさに「夢供養」でございます。
新田鉄道模型運転士は、4歳の頃にこの病気と診断され、お母様も9歳の時に同じ病で亡くなられていると報道されております。
お父様と江ノ電に乗って以来、江ノ電ファンになり・・・
鉄道が好き、と言うよりも病院暮らしの中で親子のふれあいを味わった感激が、
江ノ電と言う存在そのものに反映したのやも知れません。
「僕、江ノ電の運転士になりたい。」
まぁ鉄道ファン少年の至極当たり前の憧れは、
それは生きる希望であり、
彼の生存意義にもなったのでごさいましょう。
平成10年秋になり、この夢を叶えて上げたい・・・
彼の病状と法制は、この夢を実現させるには余りに厳しいものがあり・・・
お父様は、せめて「試乗」だけでも・・・と動きます。
これに呼応して、ボランティア団体と江ノ電株式会社が協力し、
同社極楽寺車庫の構内で、運転席に同乗させる訳には行かないか・・・
当時の運輸省関東運輸局は、無論ダメと・・・・
この頃、無資格職員を運転席に乗せていた事がまぁまぁ騒がれておりまして・・・
しかし、彼の病状は段々悪くなり・・・
そして、関東運輸局は・・・
「当局は本件について聞いていない・・・」
このお役人さんの「粋」が、
彼の人生で、一番輝く瞬間を作る事に・・・
この方も、人の親だったのでしょうね。
平成10年11月11日。
江ノ電極楽寺検車区車庫で、「106形108号」電車に新田君と関係者が乗り込みます。
昭和6年新潟鐵工所製15メートル級電車。
「タンコロ」の愛称を持ち、現在も動態保存がされていますが・・・
新田君はこの「108号」が特にお気に入りだったと言う事で・・・
構内の短い距離、運転台「添乗」を楽しみむ彼は制服・制帽を着用し・・・
しかし既に車椅子で・・・
運転台に座らせてもらったりもし、まさに「乗務員」気分を堪能して・・・
これは後にドラマにも、また地方版ではあるものの、報道もされましたが・・・
この4日後、彼は霊山への旅に出たのでございます。
16歳でした。
時は過ぎて・・・
品川区で学習塾を経営される男性が、趣味でNゲージ鉄道模型(150分の1縮尺)をされていて・・・
この新田君の話題に触れて・・・
定尺(1820×920ミリ)サイズの江ノ電レイアウト(ジオラマ)を2年掛けて制作し、
報道によるとフィギュア600体・ミニカー100台を使って沿線風景を再現とか、手間の掛け方が違います。
そして、新田君のお父様を通じて、江ノ電にこの模型が寄贈されたものであります。
で・・・
12月3日毎日新聞神奈川県内版で、事の子細を掌握した深谷・江ノ電社長が、
「運行に関わる業務を除き、他の仕事を停止させても、この彼の夢の続きを果たしてやろうじゃ無いか。」
模型は電気配線を一部改良し、旅客がボタン一つで動かせるものへ・・・
そんな展示用のものに変更されたのです。
そして、この・・・
150分の1とは言え、「江ノ島電鉄所管車両」の運転士に、新田朋宏君が任命されたものであります。
夢供養、それと共に、
これぞ鉄道屋の粋であり、誇りであります。
小生も模型屋にございますが・・・
これを超える作品を作れないだろうと存じます。
そこに思いが凝縮されております。
それも無数の人間の、同じ思い。
日本で最初の鉄道会社が任命した鉄道模型運転士。
私は忘れません。
夢供養 早く戻りて この軌道に 君の鼓動を響かせたらむや
この文を書くのは辛い、と言うよりは・・・いやぁ浪花節語りの小生には落涙中断が多いのですが・・・
いゃ、泣けて泣けて・・・
ここまで時間が掛かったのも、前代未聞にございます。
新田鉄道模型運転士に心より回向と・・・
敬礼を捧げます。
<引用・12月20日毎日新聞ネット版/22日産経新聞ネット版/23日読売新聞ネット版>
<文中画像は小生制作の物で本件記事の模型ではございません。>

