駅でキスしたり抱き合ってるカップルどう思いますか?
困ったことに答えてくれるサイト『Yahoo!知恵袋』で「駅でキスしたり抱き合ってるカップルを見るとどう思いますか??」という質問があり、多数の回答が寄せられている。..........≪続きを読む≫
「ごめんね、ごめんね・・・」
昭和57年になったばかりの冬の事です、小生何時もの様に上野駅地平ホームに助勤として配置され、行先標(サボ)を他のホームから持ってきた時の事。
若いカップルがお互いに泣きじゃくって抱き合っています。
まぁ四半世紀前のこの時代も、そんな光景はそこここにございまして、大抵は他愛の無いもので、我々駅員もん~なもんは捨て置いて、冷たくあしらったもんでございますが、このお二人はただならぬものがありました。
「私、絶対貴方の事、死んでも忘れ無いからね。」
男性は確実に青白い顔をしていたのですが、背後に御両親なんでしょうか、やはり涙を・・・
「俺、生きてて君と出会った事・・・本当に嬉しかった」
なんて事を言っているのですね。
時刻は23時半過ぎの13番線ホーム。
ホームには仙台行寝台急行第1101列車「新星」、20系客車9両が停車中です。
23時42分、発車のベルが鳴り響きます。
列車にご両親とおぼしき男女と男性が乗り込みます。
が・・・女性はなかなか彼から離れません。
小生は待機時刻だったんですが、気になってホームへ出ておりました。
放送が掛かります。
「寝台急行新星号、発車です・・・自動扉ではございませんので、デッキの御客様はデッキの扉をお閉め下さい」
未だ、カップルは抱き合ったまま。
「おい、君行ってさ、扉閉めて来い。」
運転主任さんが指示しますが、小生ちょっと戸惑った。
「良いから、そうしてやれ。」
走って行きまして、恐縮しながら扉を閉めると、女性はホームに。
その瞬間、車内のお母様とおぼしき方が、
「ちゃんと生きて!この子の分まで生きて!」
扉を閉めて手を上げて合図し、急行第1101列車は静かに発車して行きました。
運転主任さんに報告します。
「そりゃキツイ話だな、お兄ちゃん、そんなに生きられないんだろうな・・・ただ、駅の人間が見送るのは楽しい旅のお客ばっかりじゃ無いんだ、哀しい旅のお客も居るんだよ、でもそれをちゃんと見送るのが、上野人の誇りってぇヤツだ。」
当時五十代でしたから、既に退職されていると思いますが、人情家のこの運転主任さんは後に某駅の駅長さんもされたそうです。
その同じ年の夏。
またも地平ホームで、今度は老夫婦と孫たち2人でした。
時刻は22時過ぎの15番線ホーム、既に東北本線経由青森行寝台特急第5M列車「はくつる」の583系寝台電車13両が停車しておりまして、ベルが鳴り出した処です。
丁度清掃をしていたのですが、
「お爺ちゃん!お爺ちゃん!」
と孫たちがほぼ絶叫に近い声で泣くのです。
近づいて行くと、列車に乗られた老夫婦のお爺様が、
「立派になれ!」
と毅然とした姿と声で、でも優しい眼で・・・
ちょっと・・・今度も感じてしまいまして・・・「今生の別離」ってのを・・・
「特急はくつる号、ドア閉まります。」
一応、横で見ていたのですが、男性・・・三十代位でしょうか、子供達を押さえつつも、
「父さん!ありがとう!」
と。
白い車体に青い帯の電車が軽やかに走って行く横で、お母様なんでしょうね、未だ小学生位の子供達に、
「お爺ちゃんの事、覚えているんだよ、ちゃんと・・・忘れ無いでね。」
事情は判りませんが、今生の別離。
18の小生も貰い泣きしちゃいまして、ホーム事務室でそれを報告すると、また貰い泣きです。
旅人の送り手として拝見しておりますと、色々な方がこの駅を出発して参ります。
多くは甘い、そしてコノヤロ!と後頭部を鈍器で殴打したくなる衝動に駆られるもんばかりですが、中にはこんな切ない、哀しい旅立ちもございます。
それをちゃんと、でも定刻に、安全に、そしてそっとして置いて上げる。
上野駅はそんな人生の機微を知る・・・まさに人情も一杯詰まっています。
