とにかく、国鉄には神様が沢山居ました。


 どの神様も、本当に人間技とは思えないテクニックを持っていました。


 前述の「上野駅の声」、乗客室山崎職員放送室の貴重な画像がこちら。


 とにかく絶対顔は写さないで、と言うので後姿だけですが、四半世紀近くになりまして、むしろこちらの方が史料性が・・


 ずらっと並んでいるのはモニター、各ホームや改札・玄関の他に、待合室や地下通路も監視出来ました。


 更にその上の大きなモニターは、統合信号所(統信)の制御盤を映し出したカラーモニターで、各ホームに接近・停車・発車と、列車番号が表示されておりまして、状況が直ぐに判る仕組みでした。


 神様ホームにも居ました。


 列車が遅れるとダイヤグラムを引っ張り出して、この統信モニターと見比べて、列車の出入りを「読む」んですね、この方は運転主任さんでしたが、上野駅一筋で駅の軌道配置がすっぽりと頭に入っているんです。


 この山崎さんも同じで、やはり「読む」んです、しかしどの方も統信の「決定」が出て、実際に列車が入って来るまでは絶対「動かない」んです。

ap2149 ←旧放送室の山崎職員。


 が、例えばホームが変更するとなる前に、時々「神業」が見られました。


「おい、学生さん・・・ちょっとサボ(行先表示標)をさ、高架第4(7・8番線ホーム)に持って行ってくれや・・・」


 なんてぇ具合に「先手」は打つんです。


 んでもって、殆ど間違わないんですよ、これが。


 山崎さんの凄さはダイヤが乱れた時の放送ってのは、前回書きましたが、その絶妙なタイミングをきっちりと読んでいるってのに気付いたのは、氏が退職する直前でした。


 ちょうどこの放送室休憩で顔を出した時、実はダイヤが雪で乱れて凄い事になっていたんですわ、この時には案内所勤務で、御客様の取り巻きから脱走して来たんですね。


 右手横に「テレスピー」と呼ばれた、駅構内インターホンがあるのですが、小生と話しながらもそれを聞いていて、不意に放送のスイッチを入れたんです。


「本日も上野駅ご利用、誠にありがとうございます・・・ただいま常磐線は大雪の為に・・・」


 いやいや、東北高崎も凄い事になっているんですが、何故か常磐線関係を「鳴き」始めたんです。


 業界用語で「鳴く」は「放送する」の意味でして・・・で、その瞬間にテレスピーが「鳴く」んです。


「統信より遅れておりました常磐線40XXM、特急ひたち号はただいま南千住通過、着番(到着番線)変更して本日、14番線に入ります、折り返し40XXMも14番線からの発車と・・・」


 山崎さんの放送は途切れず、


「・・・遅れております平からの特別急行ひたち号、本日は14番線に変更致します・・・」


 聞いている側からすれば、既に書かれた台詞を読んでいるが如く、さらさらとスムーズなものです。


 そして、路線名・時刻・列車愛称・時間はほんの少し強く言っているのです


 で、案内所に取り巻いていた御客様の半数が14番ホームへ流れて行く・・・


 この放送室は、中央改札口柵外山側(広小路玄関から入って左側)の、みどりの窓口2階にありまして、見渡しも良かったんですが、新幹線開業時の改装工事で喫茶店になりまして、放送室も「情報センター」と改称して地下へ移ってしまいました。


 更に現在はまたまたみどりの窓口へ改装され、この場所は業務用として非公開になってしまいました。


 上野駅だけでは無く、国鉄自体が「名も無き神々の城」だったんですが、小生が目にした「」はこの上野駅だけでも実に多くいらっしゃいました。


 そこに、あの動乱の瞬間に居られた小生は、やっぱり幸運です。