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気になる報道の備忘録

バイアスに気をつけましょう。
議論では相手の人格を大切にしよう。

 

週刊新潮が萩生田光一文部科学大臣の「カジノ不祥事」を報じている。

35日(木)と12日(木)の2週連続で、合計9頁を使った疑惑報道である。これらの報道に対して萩生田大臣はそれぞれの発売当日、自身のブログ「萩生田光一の永田町見聞録」http://blog.livedoor.jp/hagiuda1/ に反論コメントを掲載した。新潮側が「疑惑」とする各論点一つ一つに丁寧な反論を展開する一方、自身の行動にも「自費によるプライベート旅行とはいえ、こういった誤解を招きかねないという想像力に欠けていた」点があったことを真摯に反省するという見解も表明した。

 

新型コロナウィルスの蔓延で困難な対応を強いられ続けている政府にとって、このタイミングでの「不祥事」は、事実だとすれば極めて重大な事案である。そこで、新潮が主張する各論点について、新潮側にも萩生田大臣側にも与せず中立な観点を保ち検証して行きたい。

 

新潮が主張する論点

論点1:萩生田氏はカジノ利権業者から「超VIP待遇」を受け、癒着している。

論点2:「画像を撮られる」事自体がカジノ汚染の闇の深さを表している。

 

新潮が主張している論点は、修飾をそぎ落とせばわずか2点である。要するに「萩生田氏はIR議連の重要人物であるのに、事業候補社のホテルを利用し特別待遇を受けていた。これはカジノ利権を狙う事業者と政治家の癒着である。カジノ汚染の闇は深い」ということだけである。新潮側は、その論拠として、いくつもの「証拠画像」や「証拠動画」を列挙するのだが、断定的で刺激的な言葉の数々と比べると、各根拠にはやや頼りない印象がある。

 

論点1:「超VIP待遇」の検証

 

新潮が「特別待遇だ」と主張する根拠は、2種類に分類できる。1つは「特別サービスの提供(配車)」であり、もう一つは「特別な接遇(待遇)」である。これらについて、検証する。

 

根拠1:送迎に関する特別サービスの提供

ギャラクシー社が用意した「黒塗りのワゴン」でターミナルからバンヤンツリーマカオ(ホテル)まで移動した。

 

旅行案内サイトなどでマカオについて調べると、フェリーターミナルからホテルまで自動車で通常15分程度かかるようである。「ギャラクシー・エンターテインメント・グループ(以下ギャラクシーグループ)」では、バスによる送迎が基本的なサービスらしい。

特にギャラクシーグループの送迎関係のサービスを調べると、

 

ギャラクシーマカオでは、様々なディスカウントの特典が受けられる特典会員カード「GEG Privilege Club Card」を発行しているという。誰でもすぐに無料で作れ、ゴールド、プラチナ、ブラック、ダイアモンドの4種類があるとのことである。

 これらの「特典会員(カード)」には豊富なサービスメニューとディスカウント特典が存在し、プラチナ会員向けの付帯サービスから関連がありそうなものを抜粋すると、「優先リムジン利用サービス」、「ロールスロイスリムジン使用」、「接待係&執事による室内チェックイン」、「VIPホテルチェックイン」などがある。特典はあくまでも「ディスカウント」ということであるが、要するに「ホテルが用意している車」でホテルとフェリーターミナルの間を送迎することは、「通常サービス」の範囲内である。また「VIP」とは、顧客に特別感を感じさせるため、つまり顧客満足感を演出するためのサービスの一部として、名称に付与した修飾的接頭辞に過ぎないと思われる。

 

週刊新潮が配信した動画で迎車シーンを確認すると、確かに「黒いワゴン車(トヨタ)」に乗り込んでいるのがわかる。画像をよく見ると、この車には、大きな「ギャラクシーグループの社名とロゴ」が左側ドアに表示されており、通常の業務(サービス)に使用している社用車であることがわかる。これは通常の「プラチナ会員」向けサービスと同水準の一般サービスである。しかもロールスロイスとトヨタワゴンでは「車格」が違う点も考慮すれば特別感があるのは寧ろロールスロイスだろう。

従って、通常の「VIP」サービスの範疇を越えておらず、この点を持って「超VIP」と断定するのは難しい。仮に私が萩生田氏の立場であれば、プライベート旅行ではリムジンも仰々しくて嫌だがホテルのロゴ入りのワゴン車も勘弁して頂きたい。大臣は決して口にはしないが「いい迷惑」だった可能性さえある。

 

ところで【VIP】とは、“Very Important Person”の頭文字をとり「要人」という意味であるが、自民党幹事長代行は文字通りの要人である。そのため一般論として、海外において通常の一般人と区別して扱われたとしても全く「特別」ではなく、むしろ治安状況と照らし、プライベートと雖も警護サービスを付与すべき場合もあるだろう。

 

https://www.dailyshincho.jp/article/2020/03111659/?all=1&page=2 より

 

  

根拠2:特別な接遇

 

・同グループ「日本法人」の総支配人岡部智氏がフェリーターミナルまで出迎えた。

・ホテルの入り口で日本法人COOのテッド・チャン氏がわざわざ出迎えた。

・飲食店街でも岡部氏とチャン氏が同行していた。

 

「超VIP待遇」と断定する2つ目の根拠は、ギャラクシーグループの「幹部」がわざわざ出迎えたという事実である。これを「特別な接遇」と捉えた場合には確かに通常メニューにはないサービスとは言える。

しかしこれは、「ギャラクシーグループにとって特別に意味のある接遇相手だった」ということである。ギャラクシーグループは、マカオでホテルやカジノを運営する香港の企業グループである。その「日本法人」とは、日本におけるIR事業に進出するための組織であり、そこでの「COO(最高執行責任者)」や「総支配人」とは、日本での事業展開を発展させるための営業戦略の責任者達に他ならない。実態としては、「グループのマカオホテルに日本の重要人物の宿泊予約が入った。その人物とは『日本市場進出のキーパーソン』“Mr.Hagiuda”である。これは重要接点を作るチャンスなので事業開発責任者に連絡してマークさせた」ということであろう。これは「IR事業への参入」を企図する企業側の自己都合による「営業活動」である可能性が高い。決して「ギャラクシーグループを挙げての特別な接遇」などではない。また、ご家族帯同の旅行であれば、一般的に想像しがちなスキャンダラスな篭絡手段は使えなかっただろう。

 

萩生田氏側にとってみれば、煩わしい「付きまとい営業」でしかなかっただろう。仕事に関係のある人物に移動や飲食街の散策まで付きまとわれてしまったら、仕事を離れ仲の良い知人夫妻と来た寛ぎの旅行が台無しである。私が萩生田氏の立場であれば「やれやれ」と言いたいところであろう。

 

結論:萩生田氏が受けたのは「超VIP待遇」ではなく、ただの「付きまとい営業」であり、企業側だけが勝手にワクワクして終わった出来事に過ぎない。

 

 

論点2:「カジノの闇」の検証

 

これは、検証の必要もなく、新潮の主張の通りであろう。仮に新潮の記事にある通り、この動画は新潮ではない誰かによる用意周到な準備の上でのものならば、その情報網は誠に恐ろしいものである。ギャラクシーグループ内の情報が漏洩したのか、萩生田氏側のどこからから漏れたのか、情報源は不明である。また、撮影されたのは20188月の旅行であり今から17か月も前の、大臣ではない時期の出来事である。週刊新潮が最近入手したのか、それとも入手してからタイミングを見ていたのかはわからないが、いずれにしてもし烈な企業間の営業競争の存在が伺われる。この闇については、業界の外側の人間には全くわからないし、知りたいとも思わないのでこれ以上深掘りはしないが、教育行政で重要な役割を担っている現在、萩生田氏にはご注意頂きたい。

 

まとめ:汚染されたモノ

 

今回の一連の報道で汚染されたモノは、カジノ事業ではなく「読者の脳内記憶」である。つまり、萩生田光一文部科学大臣のイメージが著しく毀損された。大臣に就任するかなり前の話を、まるで大臣就任後の事であるかのように報じるのもメディアの常とう手段である。

これに対して萩生田氏側は法的措置を検討しているようである。大いにやるべきであろう。萩生田氏は庶民感覚を忘れない政治家であるからこそ、強大な権力を掌握し始めた現在も言葉と行動にはおおらかな傾向がある。教育改革は待ったなしの状況であり、文部科学大臣には国家の将来を担う重責がある。今までは誤解も寛容に放置し続けてきたが文部科学大臣としては看過すべきではないだろう。このままメディアに調子に乗らせ続ければ、森元総理のようなキャラクターで固定されかねず、政治家としての行動に足枷となりかねないからだ。

 

マスメディアが特定政治家に色をつけること、例えば某若手大臣のように下駄をはかせたり安倍総理のように不当にディスリスペクトしたりすることは、国益を毀損する。そのため、仮にマスメディアが「何かに傾斜した活動」を展開しそうな場合には、政治家側も国民側もNOを突きつける必要があるだろう。