日本のインフルエンザワクチン行政が推奨に留まっている理由
(本稿は個人備忘録的意味が強く引用が豊富であるため、転載などは御控え頂きたく)
安倍総理による令和2年3月2日からの休校要請は、多くの論点を提示したが3月19日にまずは無難に終了した。COVID-19(新型コロナ)の年齢階層別のかかりやすさは未確定情報だが「理由は不明ながらも若年層は重篤化しない」ということは言えるようである。その点で、「学童や生徒の活動を止めても意味がない」という主張も散見されるが、これには異論がある。いわゆる「福見理論」を知っていれば、何を期待して休校要請を出したのかは良く理解できる。福見理論とは「児童生徒の感染予防が社会全体の流行規模を抑える」という考え方であり、かつてのインフルエンザの学童への集団接種の根拠となっていた考え方であろう。今回の休校要請は、これを新型コロナの抑制に応用したものだと推測している。
【インフル集団接種はなぜ終了したのか】
医学の歩み2013年Vol.244「インフルエンザウィルスワクチン 現行ワクチンの歴史的背景と新ワクチンへの期待(草刈章氏くさかり小児科院長)によると、
https://www.ishiyaku.co.jp/magazines/ayumi/AyumiArticleDetail.aspx?BC=924401&AC=12147
わが国においてはインフルエンザに対する国家的な戦略として,
1. 1960年代から90年にかけて学校での集団接種が行われた(福見理論に基づく)
2. しかし,あいつぐ予防接種訴訟の敗訴した
3. ワクチンの有効性に疑義が出されるようになった
4. 1994年に集団接種は中止になった
5. その後,インフルエンザによる高齢者や乳幼児の死亡者数の増加がみられた
6. 集団接種が流行を阻止するうえで一定の役割を果たしていたと再評価された
という流れとのことである。「有効性の疑義」については、後述の「前橋市医師会レポート」が象徴的なものと思われる。
【日本はなぜ「ワクチン後進国」となったのか】
福岡市医師会の「医療情報室レポート2018年6月1日No.224」によると、
https://www.city.fukuoka.med.or.jp/jouhousitsu/report224.html
■主な原因:ワクチン接種後の有害事象と偏ったマスコミ報道
行政の流れ
1. 1948年の「予防接種法」制定
2. 同時に12疾病のワクチン接種が義務化
3. 感染症による死者は大きく減っていった
4. 一方で、ワクチンによる健康被害も発生するようになった
5. 1989年から開始されたMMRワクチンでは、ムンプスワクチンの成分による無菌性髄膜炎が多発し国に対する訴訟等が相次いだ
6. 2005年日本脳炎ワクチン接種後の急性散在性脳脊髄炎(ADEM)発症
7. 2011年のHibワクチンと小児用肺炎球菌ワクチン同時接種後の死亡事案
8. 2013年に子宮頸がんを予防するHPVワクチンの接種勧奨差し控え
9. 事あるごとにワクチンの負の面ばかりがセンセーショナルに報道された
10. 国民の予防接種に対する不安を助長した
■萎縮した予防接種行政
1. ワクチンの負の側面ばかりが強調され国民の不安が増す
2. 1994年の予防接種法改正、接種要件が「義務」から「勧奨」接種へと緩和
3. 接種形態も「集団」から「個別」接種へと移り変わった
4. 製薬業界も消極的となり、国内での新ワクチンの生産は殆ど行われなくなった
■日本特有の制度「任意接種」
1. 日本の予防接種制度は「定期接種」と「任意接種」に区分される
2. 任意接種は自治体の補助がない限り個人の費用負担
3. 万が一の際の副反応に対する補償も定期接種に比べて十分ではない
4. 自治体による接種勧奨が積極的に行われないため、国民に「任意接種はさほど重要ではない」と誤った認識を広げかねない
【前橋市医師会レポートの主張】
「感染症誌2003 インフルエンザワクチンの過去,現在,未来(日本鋼管病院小児科 菅 谷 憲 夫)」によると、
“前橋市医師会の報告は,学童の集団接種の有効 性を否定し,その中止に大きな影響を与えた.(略)ワクチンの有効性は認められたが,期待されたよりも大幅に低かったと評価しているのである.(略)
学童集団接種の有効性を否定したと伝えられている前橋市医師会の報告は,インフルエンザ欠席者の定義が,現在の常識からは認めがたいほどに甘く,インフルエンザ以外の原因の欠席者が多数入り,ワクチンの有効率は実際よりも相当に低く計算されたと思われる.”
とのことである。
以上
