朝が来た。……と言っても、ネカフェは室内なので日の光は入ってきていないが。日野通は何かに
起こされたかのようにパッと目を覚ます。
「ん? ……朝か?」
むくっとソファから起き上がって、腕時計を見て時間を確認する。時刻は十時半。ニートが起きるのにふさわしい時間だな。
「さてと……ゲームが発売されてないんじゃ、広める手だてもないしなぁ。……とりあえず外出るかな」
がちゃっとドアを開けてカウンターの方へと歩いていく。
カウンターにいた店員と思われる女性が日野通からレシートを受け取って料金の計算をする。
「日野さ~ん……また一晩ここに居たんですか? ちゃんと家に帰ってくださいよ。っま、こっちは儲かるからいいんですけど」
日野通はここのネカフェの常連なので、店員の殆どに顔を知られている。さらに、ほぼ毎日来て寝泊まりしているので、下手な店員よりもこのネカフェに詳しくなっている。
つまりは廃人な駄目人間というわけだ。なんたって、これといった仕事もせずに、プログラミングデバックとかでお金を稼いでいる感じの人だからね。
でも、デバックなら出来るからただの駄目人間では無いんだな。いささか認めなければならないようだな。
「……日野さん。お金が最高に足りないんだけど」
レジカウンターの所に広げられた四百三十二円を見て店員の女性がため息交じりの言葉を言っている。あたりまえだけどね。
「あ、忘れてた……。…………愛唯ちゃん、ここはひとつ頼みます……」
日野通はまたもや綺麗なお辞儀を見せてカウンターの女性、久留間(くるま)愛(め)唯(い)に精一杯お金を貸してもらおうと懇願している。
愛唯ちゃんは、はぁ~~っと大きなため息をついてから財布からお金を取り出して、レジの中に放りこんでそのおつりとカウンターに置いてある四百三十二円を日野通に手渡した。
「? このお金は?」
「日野さんどうせ無一文でしょ? これくらい持っときなって」
「え! さんきゅうでs」
「そのかわり、またなんかよろしくね?」
日野通が感謝の言葉を発しようとしている最中に、愛唯ちゃんがその言葉を遮って見返りを催促する。
「……そのうちお返しします」
「よろしくねっ」
完璧な営業スマイルで愛唯ちゃんはあくまでも見返りを求めるしぐさを見せる。
「…………お金手に入ったらでいいですか?」
「もちろんいいわよ? 忘れたらその時は……って感じですけど」
にこっとしている顔の裏にどんな顔が隠れているのかが女性の怖いところですよね。でも、女性にはそういうミステリアスな面があって、反対に男性は素直すぎる面があるから人類って保たれているのかな? 詳しくは知らないけれど。
