ペンとノートを手に取ってみた 

ページをめくると色褪せた紙に

薄くなった文字が浮かんでいる


僕は浮かび上がった言葉を

ノートの中に書き写していた

それは懐かしい行為だった

溢れ出てくる想いを残すその作業は

今思うと 笑ってしまうようなことだった


ノートの中には昔の自分がいた

社会に不満や怒りを感じていた

あの若かった頃の自分がいた

あの時 僕はもがいていた

何もかもが嫌だった

何もかもが疑問だった

その時の想いが

ノートには詰っていた


そこには希望があった

そこには夢があった

そこには疑問があった

そこには不満があった

そこには悩みがあった

そこには先の見えない自分があった

そこには好意を持つ人がいた

そこには出会いがあった

そこには別れがあった


アロマの香りはもう家中に広がっていた


僕はノートに今の自分を書いた

今を生きる自分を書いた


そこには

かつてのような希望がなかった

かつてのような夢がなかった

かつてのような疑問がなかった

かつてのような不満がなかった

かつてのような悩みがなかった

かつてのような自分がなかった

かつてのような好意を持つ人がいなかった

かつてのような出会いはなかった

数々の別れがあった


ノートは今の自分でいっぱいになった

昔の自分は色褪せていった

僕はもう忘れてしまったんだろうか

あの頃の想いを


アロマの灯が消えて

天井に向かって伸びていた一筋の煙は

風とともに消えてなくなった




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机の引き出しにしまってあった

高校時代のA5サイズのノートより