命を受け入れるって簡単なことではありません。 | 【鹿児島⭐︎動物病院から】飼い主さんとペットの絆を深める心の持ち方接し方を提案 獣医師 浜崎菜央

【鹿児島⭐︎動物病院から】飼い主さんとペットの絆を深める心の持ち方接し方を提案 獣医師 浜崎菜央

鹿児島で動物病院を経営しつつ、飼い主さんがペットに1つでも多くできることを提案できる場として、ペット関連のイベントや講演をしています。
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病気しない犬ってなんですか?とか

長生きする犬って何犬ですか?

と質問を受けることがある

アラフォー獣医師 浜崎菜央です。


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(入院中でリハビリ中のグミちゃん。すっかり懐いてくれちゃってますハート


あのね…

そんなことわかっていたら困りませんよね。

みんな病気しない子を選ぶに決まってる。



これと同じ感じで、

飼いやすい犬ってなんですか?とか

おりこうに育つ犬って何犬ですか?とか質問されます。


そんなことわかっていたら困りませんよね。

そして、飼いにくい犬は淘汰されてくはず。



これはわんちゃんねこちゃんに限らず、

人でも言えることではないでしょうか?



種類で決まってしまうのなら、

個性はいきてこないですよね?

人それぞれだから楽しいんだと思うんです。


同じお家で生まれた兄弟でも、人それぞれだから、

子育てもマニュアル通りにいかないし、

同じ兄弟で同じように育てても、

同じようにはならないのだと思うんです。


マニュアル通りに生き物が育つことのほうがないと思うんです。




まず動物を育てるにあたって、
自分自身がちゃんと向き合う余裕があるかどうか?


それが大事だと思うんです。


命あるものを受け入れるということは、

人であっても、

わんちゃんねこちゃんであっても、

とても大きなことです。


命ある限り、きちんと向き合う

命ある限り、きちんと守り抜く


その覚悟なしでは、
命あるものを受け入れるべきではないと思ってます。




先ほどの質問をする理由は、時間とお金を節約したいから。


病気をするとお金がかかる

元気で長生きしてほしい

病気をしなければ病院代もかからず、寿命を全うしてくれる


飼いやすく、お利口な子であれば、

しつけに費やす時間は少なくてすむ

ちゃんとしつけができないような子であれば、しつけをするのにお金もかかる



時間とお金をかけずに、

命を受け入れることはできないと思うんです。



こんなに飼うのが大変だと思わなかった

とか


こんなお金かかるなんて、大変

とか

言われることもあります。



命を受け入れて、寿命を全うさせるには、

お金も時間もかかります。






犬を飼ったことがない初心者であれば、

初心者向きの種類のわんちゃんを選ぶべき。

それと同時に、

きちんと育て方を学ぶべき。


初心者なのに、全く勉強もせずに、

流行っている

というだけで、

わんちゃんを、しかも流行りの犬種を飼うことはおすすめしません。



それから、逆パターンも・・・



調べる限り調べ尽くして、

飼いやすい犬で、病気もしないだろうと思われる犬をセレクトして、

この子はこうあるべき

と決めつけて育てること。

これもおすすめしません。


だって、なんでもマニュアル通りに育つはずはないのですから。

それを「こうあるべき」と押し付けると、

その子がかわいそうですから・・・




流行っているからといって、飼いやすいとは限りません。

そして、どんな命でも、向き合う必要があるのです。

向き合うために、学ぶことも必要になるのです。

時間もかかるし、もしかしたら学ぶためにお金も必要かもしれないですよね?





トイプードルが流行っていますが、

見た目がぬいぐるみみたいでかわいい

という理由だけで飼った人も多く・・・



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(こんな状態でトリミングに来る子もいます)

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(さっきの子もカットしたらこんなふうに・・・)



いざ飼ってみたら、

お手入れが大変で、

定期的にカットに行かなきゃいけなくて、

人の美容院よりも高くつく。


「それでもいいの」

という人ばかりならいいのですが、

「犬のくせに・・・」

「人以上にお金がかかるわ」

とか口にする人も多いんです。


飼う前に、

カットが必要で、

どれくらい間隔で行かなきゃいけなくて

一回にいくらくらいかかるのか?

までリサーチしておくべきだと思うのです。



ぬいぐるみみたいでちっちゃくてかわいいからって

ねこかわいがりした結果、

噛みつき犬になることもしばしば。


「かわいいと思って飼ったのに・・・」

「他のおうちの子はお利口なのに、うちのこは・・・」


と言われるのですが、

育て方を間違ったから結果が変わってしまっただけなのです。



なんでもわんちゃんが悪いことになってしまうんですよね。


そうではなくて、

そういう状況にしてしまっているのは、

私たち人間なのです。



命を受け入れる前に、

もっと命と向き合うことを考え、時間とお金もかかるものだと受け止め、

それから飼うべきだと思います。



先日もテレビで、『わんちゃんを買いに行こう』企画みたいなのをやっていて、

そこであるお店の店員さんとのやりとりが写っていたのですが、

そりゃもう『買う』ように煽りまくり。


「人気だから今即決しないと、すぐ売れちゃいますよ?」

とか

抱っこさせて、「ほら、ママぁ~っていってますよ~」

とか

とにかく今すぐ決めて買うように煽ってるんですよね。


これはテレビの中だけではなく、実際もよく目にする光景で・・・


こういう販売の仕方をするから、

さほど飼うつもりもなかった人が飼う結果になったり、

飼うにあたっての心構えや勉強も大して出来ていない状態で受け入れることになったり

するのだと思うのです。


ペットショップの中でノルマがあるのでしょうが、

まず命あるものをノルマでこなすということが間違っていると思うのです。


売れ残ったら困る

という気持ちもあるのでしょうが、

かといって、命を安売りするべきでもないと思います。



実際、飼ってまもない子が捨てられることもあります。


私のうちの子も、

飼って2、3日で里親に出された子でした。



幼稚園生の子が、犬を飼いたいと言ってペットショップで買ったものの、

甘噛みがひどすぎて、もういらない

となってしまったとのことでした。



でも、私が引き取ってから、甘噛みらしいことは一度もすることはありませんでした。

むしろ、1ヶ月半の彼女は、うちに来て1週間余りで、たくさんのコマンドを覚えるほど、優秀な子でした。


つまり、

おうちの環境がなっていなかったこと

幼稚園生に犬はこういう時期はみんなすることでしつけが必要なんだと言い聞かせられなかったこと

が原因だったのです。



思いつきでは命は受け入れるべきではないんです。

そうすることで、悪くもないわんちゃんが悪者にされてしまうのだから。




シニア犬の問題も同様です。


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(元気ピンピンでぽっくりがいいのだろうけれど、こうやって寝たきりになることだってあるのです。)


好きで年をとる子はいません。

好きで衰えていく子はいません。

みんな、飼い主さんに迷惑をかけないように・・・と思っているのに、

体は老いていって、思うように動かない自分の体を歯がゆく思っているのです。



「年をとって手がかかる」

「病気ばっかりしてお金がかかるわ」

という言葉は、

彼らにとってどんなに辛い言葉か・・・



命を受け入れるということは、同時に死と向き合うことでもある

ということを忘れないでほしいのです。



彼らの亡くなり方は、私たち人間よりももっと素晴らしいものです。



看取る人のことを考え、

自分のあり方を見つめ、

自分らしく命を消していきます。


彼らの死をもって、私たち人間は学ぶことも多くあると思うのです。



もっと命と向き合ってほしいなと思っています。