地元の家族が経営する宿
一階は住居で2階に5部屋のツインルーム
まだバブバブの娘さんを抱っこして
ティーンズらしい娘さんもいる
そしてご夫婦とおばあちゃん
家族だ、なんか安心した
一階の部屋の窓が開けてあった
受付かな?っと
私たちはチェックイン手続きすると思い
ゾロゾロ入って行った
そしたら
プライベートな空間(お住まい)らしく
追い出された
入ってって感じがしたのだけど
失礼しました
2階の部屋の鍵を2つ渡された
3号室と5号室
隣ではない
部屋に入る
大きなベッドとバスルーム
湯沸かしポット、小さなシンク、冷蔵庫
少しのお皿とフォークナイフ
小さなテーブルと椅子二脚
最低限のものは揃ってる
揃ってるんだけど、、、、
タオルがない
タオルないわーー誰か持ってる?
娘たちはこんな時のために
小さいタオル1枚は持ってきてるらしい
さすが旅慣れてる
私と夫は、ない
そっかーないかーー買いに行かなあかんかー
一日くらいティシャツ犠牲にして拭く?
2日泊まるよなぁ
どこに売ってるかなーーうーーーん
夫は買ったばかりのニューボードを
隠すように部屋に運びこんでいる
Wi-Fiは?ある?
あるけどパスワードがわからない
タオルのことやWi-Fiのこと
娘Aが聞いてくれた
この子なしでは生きられなくなっている私達
タオルとバスマットは
おばあちゃんが持ってきてくれた
なーんやあるやん!よかったぁ
Wi-Fiパスワードは
ティーンズの娘さんが教えにきてくれた
そうよね、こういうのは若い子が得意よね
清潔な部屋で安心した
けれど、何か違う
なんだろう
周りに何もない
なさすぎる
草っ原が広がっている
空き地にはゴミが散乱している
ここも海から近いところを
選んだつもりだったんだけどビーチは遠い
そうだ、暗くなる前に
夕食を確保しなくては
「一人で出歩かない
二人でも夜は出歩かない」
南アに住む娘の教え
ここを選んだ時に周りの地図も見た
KFCがあるから大丈夫だろうと思ったのだ
「そうだ、ケンタッキー買いに行こう」
車で5分のところにケンタッキーがあるなら
都会な気がしたんだけど
娘Aによると
ケンタッキーはめちゃくちゃある
南アで一番あるファストフードらしい
安くて人気なんだって
そうなの?鶏肉が人気なのかな
日本のマクドナルドの位置付けなのかもしれない
サーフボードやスーツケース
置いて行って大丈夫かな
パスポート持っていく?!どうする?!
ざわざわした心持ちで
部屋にしっかり鍵をかけて出かけた
5分の距離の風景でなんとなくわかった
車の工場の看板が多く
日本の車メーカーもあった
この辺り一体は工業地帯なんだ
ケンタッキーに到着
入り口ドアに一番近いところに車を止めて
ささっと店内へ
おぉ,カウンターが全面鉄格子
店員さんもいない
反対側のタッチパネルで注文する仕組み
カード決済で支払い完了
カウンターの中も奥の方の棚にも
商品は並んでいない
日本なら見えるところに
保温されたチキンやハンバーガーが並んでる
何もない
注文入ってから作るんだ
もう,それはモスバーガーやん
仕事を終えたおじさんたちが
ドヤドヤ入ってくる
タッチパネルでどんどん注文していく
できるのを待つのがわかっているから
どんどん店を出ていく
後で取りに来るんだね
出来たてのケンタッキーは
一ヶ所だけある40センチ四方の
鉄格子の切れ目からニュッと出てきた
やっとカウンターの中の人に会えた
隣にガソリンスタンドとコンビニがあった
「牛乳があれば明日の朝コーンフレークくらいは
食べれるよね」とコンビニに向かう
なーんか商品は少なめなのだけど
ブルーライトっぽい紫と白のライトとか
商品チョイスが不思議な感じ
ハイテクというか近代的というか
宇宙?
オヤツも食糧バッグにまだあるし
牛乳だけ持ってレジへ向かう
並んで少し待つ
自分の番がきた
。。。。
レジの人は銀行のようなアクリル板の向こう
カウンターにはパックリを口を開ける穴
。。。。
どうやるの、これ?
娘Aに頼るしかない
カウンターの穴に商品を入れて蓋を閉じると
カウンターの反対側でその商品をスキャンして計算してくれる
現金で払うならお金もその穴に入れる
カードなら端末で決済する
穴から牛乳が戻ってきた
受け取った
車に向かって走った
防犯対策がどこもすごくしっかりしてる
それが余計に怖くなる
部屋に戻った
どちらかの部屋に集まって
夕食にしよう!イェーイ!
なぜか空元気!
なんとここテレビは
YouTubeが観れる!
M-1の予選でも観よう!イェーイ!
不安を吹き飛ばそうと
元気出してみたりした
「あーーーすごいところに宿取っちゃった!
ごめんよぉーーー」と家族にいうと
「ママが悪いんじゃないよ
めちゃくちゃずっと探してくれてたし
知らないところやし
来てみないとわからんし
大丈夫よぉーーー」
娘たちが口々に慰めてくれる
「今までどこもいい宿で
トントンときてたのになぁ」と凹む私
最低限のものは揃ってるし、
清潔だし、
問題はないのに
なんでこんな気持ちになるだろうね
得体の知れない不安が襲う
「それが治安が悪いということや」夫が呟く
それだーー!
治安が悪いってこういうこと
「南アにきて最初の一年、
こんな感じのところやった」
娘Aが口にした言葉が衝撃だった
彼女が恋焦がれていた南アの大学の
合格通知を手にしたのは3年前
すでに大学の寮はいっぱいで
自分で家を探さなくてはいけなかった
土地勘もないし
学校から近くて安いところを探した
見つけても見つけても
無くなっていく
焦る
南アの賃貸契約方法なんて分からない
初めての遠方国との賃貸契約のやり取り
こうなったら選んでいられない
貸してくれるならどこでもいい
急げ
大学が斡旋しているから安心だろうと
なんとか契約できたアパート
到着してすぐの娘から涙声の電話
家具がなんにもなかった
(写真には家具があったのに)
途方に暮れてた
そして日を追うごとに分かってきたのは
そこはかなり治安が悪い地域だった
え"ーーー!
こんな雰囲気のところに一年も?!
車もなく??
泣けた、、涙が止まらなくなった、、
あの時の賃貸契約は一年、、
親に心配かけられない
これ以上お金もかけられないと
娘Aは歯を食いしばって
耐え忍んだ一年だったのだ
到着して数時間でこんな気持ちになってる私
一年間そんな気持ちで暮らした娘A
そうだったのか
言葉が出ない
そら辛かったね
なんで言わないの(言うてたかな)
遠いってわからないことだらけだね
もっと早く車を買ってあげたらよかったのか
もっといいところに
住まわせてあげたらよかったのか
今となってはどうしょうもないことだけど
後悔がグルングルンした
かわいい子には旅させよ
この子が乗り越えなければいけない
修行だったのか
娘Aをギュッとハグした
YouTubeで
「Mr.Bean」をみた
何十年ぶりだろう
あの時より面白く感じた
何にも考えず笑えるって大事
笑いって人を救う
部屋の写真は撮ってない
けど、この毛布だけは撮っといた
日本のおばあちゃんちにもありそうな毛布
この上でヨガをした
夜遅くに車がやってくる音がした
他に宿泊客来たのかな?と耳をこらすと
下に住むオーナー家族の友達のよう
かなりどんちゃんワイワイと騒いでいた
こんなためにも厳重なゲートは必要なのだ
なんやかんやで
これもいい経験
暮らすように旅するって
こういうことも丸ごと知ること
あの時の娘のことを知れるいい機会だった
そのためにここにきたのかも知れない
旅の記憶は
こんなインパクトある出来事が
深く心に刻まれる
13/18day