巻き込まれたくないは身勝手 | 同じ空の下で ~ To you who do not yet look ~

同じ空の下で ~ To you who do not yet look ~

まだ見ぬあなたへ。僕らは、同じ空の下にいながらも、それぞれの感じ方で生きている。
「偶然は必然」というように、僕らを直接結びつけるものはなくても、意図しない形で、思いもよらない所で、あなたと私がきっかけひとつで繋がったことに感謝☆




(以下、現代ビジネスより)


イスラム過激派組織「イスラム国」の邦人人質事件に関する大報道が連日、続いている。

人質である後藤健二さんの運命に焦点が当たるのは当然なのだが、

もう1つ大事な視点が失われているのではないか。

それは「日本はヨルダンに大変な迷惑をかけている」という問題である。


?ヨルダンへの配慮が足りないのではないか


ヨルダンは、もともと拘束された自国パイロットの救出を目指していた。
ジュデ外相は1月28日、CNNテレビのインタビューで
「『イスラム国』側と仲介者を通じて数週間にわたって交渉していた」とあきらかにした。

後藤さん解放をめぐる交渉に先立って、ヨルダンはパイロットの解放交渉をしていたのだ。
そこに、イスラム国側が後藤さんの解放をヨルダンが拘束している女性死刑囚の釈放と
引き換えにする条件を出してきたために、
パイロットの扱いが2の次、サイドストーリーになってしまった。

それどころか、29日未明に公表された後藤さんとみられる男性の音声によれば
「私と交換するために死刑囚がトルコ国境に用意されなければ、
パイロットは直ちに殺されるだろう」と通告された。
つまり、パイロットの命は解放どころか、後藤さんと死刑囚の取引促進材料に使われた形である。

私たち日本人と日本のマスコミは後藤さんの運命ばかりに焦点を当てて事態を眺めている。

それは理解できる。だがヨルダンにしてみれば、日本人の命を救うために、

自分たちが犠牲を払って拘束した死刑囚を釈放しなければならないどころか、

もっとも肝心なパイロットの運命がはっきりしないのは、とても受け入れがたいだろう。

ずばり言おう。私たちは後藤さんの運命を心配するあまり、

ヨルダンの置かれた立場への配慮が不足していないか。

そんな姿勢が行き過ぎると、どうなるか。

「日本人の安全さえ守られれば、他国の人はどうなってもいい」

という身勝手な主張と紙一重になるのだ。


なぜ、そう書くかといえば、今回の事件が起きる前から、

世論の一部に「日本が戦争に巻き込まれるのはごめんだ」という主張があったからだ。

今回はイスラム過激派による誘拐事件であり、戦争ではない。だが、本質的には似ている。


日本は過激派に銃火を交える戦いを仕掛けたわけではないが、テロリストたちは日本人を誘拐した。

日本は「巻き込まれたくない」と思っていても、事実として巻き込まれてしまった。

日本が自ら戦争を仕掛けなくても、相手から攻撃を受ける可能性があるのと同じである。






「巻き込まれたくない論」の本質


本当の問題はこの次だ。

もしも日本が「オレたちは巻き込まれてしまった」などと思っているとしたら、大間違いである。

日本は「巻き込まれた」どころか、ヨルダンを「巻き込んでしまった」のだ。

当初は日本とイスラム国の事件だったが、イスラム国の巧妙な作戦によって、

ヨルダンが当事者になってしまった。その点に、私たちはどれほど思いが及んでいるか。


ヨルダンはもちろんパイロットを最優先で助けたい。

だが、イスラム国が後藤健二さんと死刑囚の釈放を交換条件にしたために、話は複雑になり、

パイロットのことばかり言ってはいられない状況に追い込まれた。

日本はヨルダンに迷惑をかけているのだ。


こういう事態は初めての経験である。

だが、実は集団的自衛権をめぐっても同じような議論があった。

日本を助けにきた米国が攻撃されたとき

「日本は指をくわえて黙って見ているのか」という例の仮説である。


集団的自衛権の行使に反対して「日本は何もできない」というなら

「自分たちが安全なら米国はどうなってもいい」という話になる。

今回のヨルダンに対する配慮のなさ、後藤さんの運命に比べて低い注目度を目の当たりにすると、

どうも日本はあまりに身勝手なのではないか。そう感じる。


「巻き込まれたくない論」の本質は、実はこの身勝手さにある。

「私たちは平和憲法を守って平和を愛している。テロリストの誘拐はひどい。

私たちは巻き込まれた被害者だ」というばかりで、

自分たちがヨルダンを被害者に巻き込んでいる事態に気が付かないのだ。


日本が国際社会で尊敬される国になるために

集団的自衛権問題で言えば、自分たちが米国に守られていながら、
いざ米国が攻撃されても「憲法の制約があるから守らない」というのは身勝手そのものだ。
「巻き込まれたくない」の一点張りで、けっして助けにはいかないが、
自分がやられそうなときは「ぜひ巻き込まれて、助けにきてください」というのである。

今回の事件と報道ぶりをみていると、日本はこれほどまでに内向きで、
自分たちの事情でしか物事を考えられない国になってしまったのか、とがっかりする。

どういう結末を迎えるにせよ、いずれ事件は決着するだろう。
そのとき、後藤さんさえ助かればハッピーエンドと言えるか。とても言えない。
まずは迷惑をかけたヨルダンのパイロットがどうなるか。
私たちはそこを一番、心配すべきではないか。

今回の事件が起きていなかったら、
ヨルダンは自力でパイロットの解放交渉を続けていたに違いない。
はっきり言って、ヨルダンにとって今回の事件は降ってわいた余計なお荷物である。

相手の立場を考えられないようでは、日本はとても国際社会で尊敬されるような国にはなりえない。
今回の事件は、日本と日本人が苦しいときにどれだけ周囲を考え、
毅然としてふるまえるか、品性が問われる分水嶺である。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・






(以下、東洋経済オンラインより)


私の名前はリンコです。シリアで捕らえられたジャーナリスト、後藤健二の妻です。

彼は2014年10月25日、私の元からいなくなりました。

それ以来、私は彼の解放のため、舞台裏で休むことなく働き続けてきました。


My name is Rinko. I am the wife of Kenji Goto,

the journalist who is being held by a group in Syria.

He was taken from me on 25 October 2014,

and since then I have been working tirelessly behind the scenes for his release.


私は今まで声明を出すことを避けてきました。

なぜならば、健二の苦境に対するメディアの注目が世界中で騒ぎ立てられています。

私は自分の子供と家族をそこから守ろうと考えていました。

私たち夫婦には、2人の幼い娘がいます。

私たちの娘は健二が日本を離れた時には、わずか生後3週間でした。

私は、2歳の上の娘が再び父親に会えることを望んでいます。

2人の娘が父親のことを知りながら、成長していくことを望んでいます。


I have not spoken out until now

as I have been trying to protect my children and family

from the media attention Kenji's plight has created around the world.

My husband and I have two very young daughters.

Our baby girl was only three weeks old when Kenji left.

I hope our oldest daughter, who is just two, will get to see her father again.

I want them both to grow up knowing their father.


私の夫は善良で、正直な人間です。

苦しむ人びとの困窮した様子を報じるためにシリアへ向かいました。

健二は、湯川遥菜さんの居場所を探し出そうとしていたと推測できます。

私は遥菜さんが亡くなったことに、非常に悲しい思いをしました。

そして、彼の家族の悲しみを思いました。

家族の皆さんがどれだけつらい思いをされているかがわかるからです。


My husband is a good and honest man who went to Syria to show the plight of those who suffer.

I believe that Kenji may have also been trying to find out about Haruna Yukawa's situation.

I was extremely saddened by the death of Haruna and my thoughts go out to his family.

I know all too well what they are going through.


12月2日、健二を拘束したグループからメールを受け取ったとき、

健二がトラブルの中にあることを知りました。

1月20日、私は湯川遥菜さんと健二の身代金として2億ドルを要求する動画を見ました。

それ以来、私とグループとの間でメールを何回かやりとりしました。

私は、彼の命を救おうと戦ったのです。


I became aware that Kenji was in trouble on 2 December

when I received an email from the group holding Kenji.On 20 January,

I saw the video demand for $200 million for the lives of Haruna Yukawa and Kenji.

Since then, there have been several emails between the group and me

as I have fought to save his life.


20時間ほど前に、誘拐犯は私に最新の、そして最後の要求と見られる文章を送ってきました。

「リンコ、お前はこのメッセージを世界のメディアに対して公表し、広げなければならない。

さもなければ、健二が次だ。29日木曜日の日没までに健治と交換するサジダが

トルコ国境付近にいなければ、ヨルダン人パイロットを即座に殺すつもりだ」。


In the past 20 hours the kidnappers have sent me what appears to be their latest and final demand.

It said: 'Rinko, you must publicise and expose this message to the world media now

otherwise Kenji will be next. If Sajida is not on the Turkish border ready for the exchange for Kenji

by Thursday 29 Jan at sunset, the Jordanian pilot will be executed immediately.'


これは私の夫にとって最後のチャンスであり、

彼の解放と、ムサス・カサスベさんの命を救うには、

あと数時間しか残されていないことを心配しています。

ヨルダン政府と日本政府の手中に、

二人の運命が委ねられていることを考えて欲しいと思います。


I fear that this is the last chance for my husband

and we now have only a few hours left to secure his release

and the life of Lieutenant Muath al-Kaseasbeh.

I beg the Jordanian and Japanese Government to understand

that the fates of both men are in their hands.


同時に、私はヨルダン政府と日本政府のすべての努力に対して感謝しています。

ヨルダンと日本の人々から寄せられる同情に対しても感謝しています。

私が小さかったころ、私の家族はヨルダンに住んでいました。

そのため私は12歳になるまで、(ヨルダンの首都である)アンマンの学校に通っていました。

だから、私にはヨルダンとヨルダンの人々に対して、

特別な感情を持っており、多くの思い出があります。


I thank the governments of Jordan and Japan for all their efforts.

I thank the people of Jordan and Japan for their compassion.

My family was based in Jordan when I was young,

and I went to school in Amman until I was 12 years old,

so I have great affection and fond memories of Jordan and its people.


最後に、私は、私と娘たちを支えてくれた、

私の家族、友人たち、そして健二の同僚に感謝しています。

私の夫と、ヨルダン人パイロット、ムアス・カサスベさんの無事を祈っています。リンコ


Lastly I thank my family, friends and Kenji's colleagues for the support

they have shown my daughters and me.

I pray for the lives of my husband and the Jordanian pilot Lieutenant Muath al-Kaseasbeh. Rinko.



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



一連の人質事件については、また別で綴るとして、

事態が逼迫している今、このふたつの記事に触れることで、

今、自分が何を思い、何を願い、何を発したらいいのか、

あるいは、何を発しない方がいいのかを、今一度、整理したい。