(以下、朝日新聞ニュースより)
水戸市にある国指定史跡の偕楽園は、今回の震災による地割れや土壁の崩壊で、閉園が続く。
例年なら1日に数万人が訪れる春の観光シーズンだが、
満開を迎えた100種類3千本の梅をめでる人もなく、ひっそりとしている。
茨城県偕楽園公園課長の横田義彦さんは
「こんなに咲いているのに誰も見てくれないなんて」と嘆く。
梅林は被害を免れたが、約13ヘクタールの庭園の南側の崖で
約120メートルにわたり地割れが発生。危険を避けるため閉園した。
再開まで半年から1年かかりそうだ。
木造3階建ての休憩所「好文亭」は土壁が崩れた。
11日の地震発生当時は、観光客が50人ほどいたが、けが人はいなかったという。
水戸市を1年に訪れる観光客約400万人のうち3分の1が、
2月下旬から3月末までの梅の見ごろに偕楽園などに来る。
しかし今年は震災以降、人が途絶えたまま。
JR常磐線は上野―土浦間しか復旧しておらず、市内のホテルのほとんどで休業中が続く。
国指定の特別史跡・弘道館も壁に亀裂が入り、
戦時中の空襲でも破壊を免れた高さ3メートルの弘道館記碑も破損した。
学芸員の小圷(こあくつ)のり子さんは
「倒れずに残ってくれただけでうれしい。
また元の姿に戻し、多くの人に来てもらいたい」と話した。
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毎年この季節、もっとも観光客を集める偕楽園だが、被災し、
梅が満開を迎えても、再開の目途は立っていない。
ニュースでは半年から1年かかるのではないかということ。
震災後の津波により、多くの死者、行方不明者を出し、
避難所などでの厳しい生活を強いられている宮城や岩手、
震災後の原発事故が国内外の最大の関心事となっている福島に比べると、
茨城が報じられることが非常に少ない。
その茨城だが、県内の建物損壊数は23日午後6時時点で4万5483戸。
宮城県が8108戸、岩手県が1万1158戸ということからも、被害の甚大さを見てとれる。
今でも断水している地域が多く、
更には原発からの放射性物質による野菜の出荷停止や自粛措置など、
風評被害も含めて、二次被害が拡大している地域でもある。
それでも、風評被害で苦しむ農家を支援するトラック市、
被害を受けた漁港を支援するフリーマーケットなど、
それぞれ市民が自ら立ち上がって主催するなど、
復興に向けた取り組みがなされていることは、実に頼もしい。
摂取制限があった県内の水道水も、27日には全域で解除されたり、
震災5日後には、日立市の動物園で、
「きぼう」「ゆめ」「はる」と名付けられたライオンの赤ちゃんが誕生するなど、
笑顔や元気につながるニュースも聞くことができる。
偕楽園の梅を楽しむ余裕は、まだないかもしれないが、
震災にあっても、変わりなく咲く満開の梅に、復興への希望が見える。
再開までに、半年、1年と、先が見えない状況とのことだが、
水戸黄門まつりが開かれる8月にも、営業再開できるとしたら、
多くの希望と勇気を与えるのではないだろうか。