少し前ですが、5月29日にデリーで行われたIAMAI(Internet & Mobile Association of India)の6th National Conference on Digital Commerceに参加してきましたので、内容やインドのデジタルマーケティングについて感じたことなどをお伝えしていきます。
IAMAI 6th National Conference on Digital Commerceとは
IAMAIとは2004年に設立された、インターネットとモバイル産業の発展に関して尽力するインドで唯一の非営利組織です。IAMAIは今回のNational Conference on Digital commerceを主催しています。本イベント は2009年に始められました。インドを代表するeコマースの企業が参加します。今回の参加企業は、Facebookなどのメッセージ機能を開発しているWebaroo(ウェブルー)、携帯電話での決済サービスを提供するMobiKwik(モビクリック)、インドのeコマース市場を急成長させているGoogle India、インドで3億のアクティブユーザーを持つブラウザを開発する中国のUCWebなど、約30社のトップやマーケティングディレクターが講演とパネルディスカッションにより、産業が抱える問題、現状、これからのeコマースについて議論しました。参加者からは登壇者へ多くの質問が出ており、とても活気のあるイベントでした。
参加前、参加当日の朝に感じていた不信感(やっぱりインドか)
参加前からインドのいわゆる「マーケティング」にはあまり良いイメージがありませんでした。情報収集のために雑誌を見ても「スペシャリスト」と言われる人たちが具体例やデータも無しに「ターゲティングがこれから重要になってくる」「ウェブでのマーケティングが大切」「顧客満足度を上げる工夫を」などのような結論で締めくくることが多く、今回のイベントでも当り障りのない情報しか得られないのではないかと内心思っていました。当日も、(「個人より企業名が重要」だとする文化的な背景もあるようなのですが)企業としてではなく、個人として参加した私の名前を受付の方はすぐに見つけられませんでしたし、イベントの開始が説明もなしに15分遅れるなど、5000ルピー(約8500円)を払ってこのイベントに参加した私は「やっぱりインドはインドか」と、当日になっても不信感が募る一方でした。
インドの置かれている環境に対して、真剣に危機を感じているトップ
しかし、いざ始まると、インド人は日本人と同じような、あるいは、それ以上、自分たちのおかれた環境に危機感を持っていることに気付かされました。何度も話されていたのが、インドのインフラ面における課題「通信環境、ロジスティクス、セキュリティ」です。これらの問題を考慮に入れた上で、「通信環境が悪いので、オフラインでも動く機能に力を入れている」「都会では最低でも2日で品物が届かなければならない」など、自分たちのおかれている環境でも通用するように機能を開発したり、ユーザーのニーズをしっかりととらえています。当たり前といえば当たり前なのですが、インド人が自国の直面している問題に真剣に向き合っている姿が、とにかく、新鮮でした。
徹底した解析 - 「セグメンテーション、リアルタイム施策、ミクロ分析」
始まってしばらくすると、「やはり、お金を出して参加したかいがあったな」と感じてきました。特に、トップ企業のCEOやマーケティングヘッドが、ウェブから得られるデータに基づいた分析(しかも、かなり細かい点に)ついて話を聞けたのは、有意義でした(と申しますか、分析結果に基づいて得られた結果について話題が大半を占めていました。)。例えば、オンラインショップTradus.comの副社長パンデ氏は、「アプリをダウンロードする要因には、他のユーザーとの距離感があげられる。例えば、1km以内に同じアプリのユーザーがいる必要ある。」と、「アプリのダウンロードとユーザー同士の距離の関係」について、解析から得た結果に基づいて言及していて、とても面白いと思いました。分析の際に、いかに細かくユーザーを分析するのか、一人ひとりのユーザーにリアルタイムでの施策を結果を分析する、そこから、発見されることを事業に活かすことが収益を出すための発見になっていくことが繰り返し言われていました。アプリの通知機能(ノーティフィケーション)がコンバージョンにいかにつながるか、オフラインでの買い物の際にも店に設置したビーコン端末によってクーポンを送ることなど、「リアルタイム分析・施策、セグメンテーション、ミクロ分析」はまさにイベントのキーワードでした。
インド人がeコマースで買い物する際に一番気にすることとは?
登壇した企業がアプリケーションの分析結果から導き出した中で共通の認識だったのが「インド人がeコマースで買い物をする際に一番気にするもの」でした。それはなんと、「どの会社が決済システムを作っているのか」なのだそうです。決済システムを作る会社は、ユーザーに安心感を与えるために有名企業である必要があるそうです。インドではいまだに現金至上主義がとても根強いのですが、今回得た、インド人が気にするeコマースのポイントは、一番意外な発見でした。
ウェブのこれからを感じる – Googleのイベント: GOSF
参加者は今回のイベントでインドの eコマースとモバイルマーケティングを再確認、または、共有したのではないでしょうか。
Google Indiaのグーグルインディアのバワンクル氏の、グレートオンラインショッピングフェイスティバル(GOSF)に関する説明は印象的でした。このGoogleによるキャンペーンの概要は、「①予めeコマース会社は無料でGOSFのサイトに登録をする。②Googleが自社の広告サービス(ディスプレイ広告、リスティング広告など)を使って大規模な宣伝を行いGOSFのウェブサイトに顧客を誘導する。③GOSFのウェブサイトを見に来た顧客は登録されたeコマースサイトで買い物をする」といったものです。結果として、イベント前の2012年12月以前インドでのeコマース利用者が600万人だったのに対して、2013年には1200万人、2013年12月のイベント後には2000万人にまで増えたのです。バワンクル氏の結論「企業規模に関わらずネットでブランドは作れる」には、資金の面で不可能だとする会場からも疑問の声が出ていましたが、潜在的な顧客これからどんどん増えていくことに会場は期待感でいっぱいでした。
インドのeコマース産業を救うのは「コスト感覚」なのではないか
メディア等では、ファッション業界のeコマースについて頻繁に取り上げられるのですが、実際にeコマース産業全体の売上額から言うと、75%を占めているのが旅行業で、ファッション業界はまだまだこれからのようです。ファッション業は大幅なディスカウントや顧客獲得のためのコストが高く収益を出せていないのも大きな問題点です。インドでは「コスト感覚」というのが、1つ大きな問題点のようです。
今回のイベントを通して、そして、実際にインドで5ヶ月働いてみてインドの市場には日本企業が入り込む余地があるのではないかと感じました。イベントのゴールドスポンサーであるWebaroo社CEOのシェス氏が以下の内容で講演を締めくくっていました。
「今や、eコマース企業はエンジニアよりも商品を置くための倉庫にいる人員の方が多く、まるでIT企業ではないみたいだ。Eコマース産業はこれからの産業であるが今は平均して30%の赤字を出しておりコストの管理が大切になってくる。そこで大切になってくるのは、受発注でミスがあった場合やレポートプロセスの自動化である。」
自社サービスであるメッセージ機能の重要性を示すために、このような点に言及したのかもしれませんが、私は内心「ドキッ」とさせられました。働いていて、インド企業はとてもコスト感覚が弱いと感じます。儲からないのをサービス内容のせいにしたり、テクノロジーのせいにすることがよくあります。新しいテクノロジーに投資をすることも大切ですが、業務の効率化や経費削減を通して、削るところを削らないと出る収益もでないですよね。
まとめ
今回はまさに、インドへのイメージが覆るイベントでした。インド人は解析をするにも、とても細かく見ていますし、ビジネスをする環境への配慮も注意深くしています。しかし、トップ企業といえども、収益への執着がどこか弱く、日本企業が補っていくことで、潜在顧客がまだまだいるインドでeコマース産業の発展が加速化するのではないかと思いました。
