日々是お気楽-mao


何年も前から気になっている店があった。


最初にその店を見たのは、車を運転している時だったと思う。不忍通りを上野方面へ走っていて、団子坂下の交差点の手前で、いきなり壁一面に描かれた毛沢東と目が合い、驚いた。どうしても気になり、後日徒歩で見に行くと、どうやら中華料理店のようだった。入り口は小さなドア一枚で、なんとなく入りにくい。しかもメニューをはじめ、目に付くのは全て中国語だ。店の前に立つと、一瞬「ここは香港か?」と錯覚してしまう。生憎、中国圏は香港しか知らないが、香港のロコエリアには、こんな佇まいの店がよくある。落ち着いて見ないと店の名前も判らない。


「毛家麺店」。


柱に担々麺と書いてあることから、どうやら担々麺が売りらしい。申し訳ないが、文化大革命も毛沢東思想も、自分の中では負に属するものなので、興味を持ちならがらもずっと敬遠していた。


そして今日、ひょんなことからランチ難民になってしまい、初めて Try することになった。近隣の店が、軒並み夕方までの昼休みに入っていたのだ。営業中の表示も出ていなければ、入り口も小さい。窓がないので店内をうかがうことも出来ない。果たしてやっているのかどうか、半信半疑でドアを開けると、明らかにチャイニーズと判る女性が登場した。


「やってますか?」


「はい」


カウンター席しかないが、厨房は広く、全体的に掃除が行き届き清潔な店だった。壁にはやはり毛沢東の絵が飾られている。メニューを見ると、どうやら四川系のようだ。


日々是お気楽-tantan

頼んだのは、当然「担々麺」。女性が一人で作るのかと思って見ていると、彼女が器を出したり、調味料を調えたところで、奥から白衣を着た男性が出て来た。こちらも正真正銘のチャイニーズで、どうも日本語が通じないようだ。彼の作ったた「担々麺」は、表の柱に名物と大きく書かれているだけあり、ビックリするほど美味しかった。辛いだけの「担々麺」は多いが、辛さの奥から甘味が押し寄せてくる。それでいて食べていると汗がにじむという不思議な奥深さを感じた。これは癖になりそうだなァと思いながら、スープまで残らず完食してしまった。


日々是お気楽-celery


妻が注文したのは、あろうことか「セロリ麺」。結婚して10年を過ぎ、妻がセロリ好きだということを初めて知った。こちらがセロリ大嫌い人間なので、ずっと我慢していたという。きっと仕事に出た先では、隠れて食べていたに違いない。


「スープだけでいいから、騙されたと思って少しだけ飲んでみたら?」


セロリ臭さを差し引いても、スープは塩味であっさりしていて、美味しかった。


なぜ毛沢東なのか、なぜ「毛家麺店」なのかききたかったが、初めての店なので我慢した。何度か通って、笑顔で話せるようになったら質問しよう。


…って、もう癖になってる?


またひとつ、美味しい店に出会えて、嬉しかった。


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