なんで?
人間には、どうしても克服出来ない物、苦手な物がある。
子供の頃から虫が苦手で、特に蜘蛛が嫌いだった。今も嫌いだ。理由はよく判らない。東京生まれの東京育ちだが、まだ街がコンクリートで固められていない時代には、そこら中に虫がいた。だから、虫と触れ合った経験がないなどと、ヤワなことを言う気はない。小学生の頃は、そこら中にいろいろな虫がいたし、ボーイスカウトのキャンプでは、それこそムカデや毛虫、フナムシやダンゴムシなど、たくさんの虫と遭遇していたのだ。何かに噛まれ大騒ぎをした記憶もない。
なのに虫が駄目なのは、自分の実体験ではなく、恐らくDNAのどこかに虫との嫌な思い出が組み込まれているのかも知れない。
虫が嫌いで直に触れないから、夏休みに昆虫採集をしたこともない。そんな子供の個人的な事情に考えをはせることなく、小学校では昆虫採集の宿題が出されていた。これは人権を無視した由々しき問題だと、今も思っている。虫を捕まえることの出来ない子供はどうするのか。仕方なくデパートで昆虫の標本セットを買い、それをばらしてお菓子の箱に詰め替えて提出していた。
六本木ヒルズへ行くと、広場に不穏な建造物が建っている。当初、あまり気にも留めていなかったので、それが何であるのか判らなかった。ところがある日、ふと遠目に見て愕然とした。巨大な蜘蛛だったのだ。
なんで?どうしてこんな所に蜘蛛が居なきゃいけないんだ?
制作された方には申し訳ないが、この蜘蛛を芸術だというのはあまりに悪趣味だ。蜘蛛だと知った日から、この下を歩くことが出来なくなった。
勇気を振り絞って蜘蛛の下へ入り、カメラを構えた。なんと蜘蛛のお尻部分は卵があるではないか。
なんだよ~、やめてくれよ~と思った。カメラを構える腕には、鳥肌が立っていた。
ついでのことに、カニも嫌いだ。
どうやら僕は、足のたくさんある生き物が苦手のようだ。


