懐かしい時代。
誰にでも懐かしい時代がある。生きてきた時間、辿ってきた道により、懐かしいと感じる時代はまちまちだが、必ずあるはずだ。楽しい時は勿論、辛い、苦しい、悲しい、二度と思い出したくないと思っていた時代さえ、時を経れば懐かしさに変わるのだ。
Waikiki から西へ、チャイナタウンを抜けてリリハ・ストリートをを北へ上がる。H-1 を越え、クアキニ・ストリートと交差する角にある「Liliha Bakery & Coffee Shop」は、僕に60年代の懐かしさと暖かさを与えてくれる店だ。カウンターだけの狭い店は、古き良きアメリカのダイナースを思わせる。朝は出勤前のビジネスマンやウーマンが、昼はランチをとるローカルのみなさんが、店の外に列を作る。ドアを開けてすぐに座りたければ、朝食とランチの隙間を突くか、午後の一瞬の静寂を狙うしかない。
昔ながらのユニフォームをまとった、決して若くはないウエイトレスのみなさんが、笑顔でテキパキと注文をさばく。笑顔を絶やさず、世間話や料理の話で相手をしてくれる。タランティーノの「レザボア・ドッグズ」や「パルプフィクション」に登場したダイナーズの世界が、目の前に広がって行く。60年代、実際にそんな店に入ったことなどないのに、なぜか懐かしいのだ。
自分の中にいつまでも変わることなく存在し、いつもいつも、そして今もアメリカへの憧れの原点であり続ける、懐かしい世界だ。


