どこまで続くんだろう。
ある物を探しに丸の内へ出かけた。丸ビルに入っている Loft なら、多分手に入れられると思ったのだ。丸ビルまでは、我が家から地下鉄千代田線一本で行ける。時間もかからない。二重橋前で降り、長い地下道をどこまでも真っ直ぐ進めば、そのまま丸ビルへ行き着く。
基本的に、空も見えず、風を感じる事も出来ない地下道は好きではない。ところが、何度もこの地下道を歩くうち、なぜかここだけは好きなのかも知れないと、思うようになっていた。とにかく広く、利用者が少ないことから、息苦しさを感じない。柱にベタベタと案内や広告が貼られていない。両側は硝子張りで、四季折々、季節に合わせた芸術作品が展示されている。細々とした雑多な店もないから、全体の色彩が統一されている。自分の立てる靴音が聞こえてきそうなほど、静まりかえっている。計算し尽くされているであろう様々な要因が重なり、歩いていて気持ちがいいのだ。表に出れば、お堀端から東京駅までの距離だから、かなり長いが、その距離を感じさせない。だから、気分的に疲れることがない。東京中に張り巡らされている地下道が、全てこんなだったら、きっと素敵だろうなと思う。
探し物が丸ビルの Loft にはなく、一瞬困った顔になった。すると、それを察して店員さんが言った。
「オアゾをご存知ですか?あそこの丸善さんにはあるかも知れませんよ」
これは単なる感じなのだが、丸の内はどこの店も店員さんの対応が親切だ。渋谷や新宿では、「ありません」以上のことを言われたことがない。
地下道へ戻り、オアゾの丸善へ行ったが、残念ながら、捜し物はそこにも無かった。
「やっぱり出遅れてますよね」
「申し訳ございません」
しかたがない、何か代用できる物はないかと、売り場の棚に目を走らせていると、横から声をかけられた。
「お客様、確認いたしましたところ、日本橋店では明日まで店頭に置いてあるそうです」
「ホント!よかった。ありがとう」
こちらのきいたこと以上に気を配ってくれる。実に教育が行き届いているのだ。
今度は東京駅の地下を抜けて日本橋へ出たが、この地下道は食べ物屋が軒を連ね、予測不能の動きをする人達が多く、歩きにくい。八重洲口から表へ出た時は、ホッとした。やっぱり地下道が好きになれないのは、店と騒音と人が多いからだと、改めて思う。
日本橋の丸善で捜し物を手に入れ、今度は少し回り道をしながら丸ビルへ戻った。朝から何も食べていないことに気づき、大好きな店で遅いランチ(時間的にはね)を摂り、再び地下へ。行きと同じ地下街を逆に歩いたが、最後がこの地下道でよかった。丸ビルから二重橋前まで続く、唯一、好きな地下道だ。
この地下道では、設置されている消化器も周囲に溶け込み、違和感がない。こんな所までちゃんと計算されているのだろう。


