こんな日もある。
昼前、友人夫妻と待ち合わせ、東向島へ出かけた。東向島に二人のお薦めのステーキ屋があるので、今年最後のランチをしようと誘ってくれたのだ。考えてみたら、東向島へ行くのは生まれて初めてなので、それだけでワクワクしてしまった。
東向島へは、浅草から東武電車に乗る。東武電車に乗るのも、これまた生まれて初めてだ。子供の頃から、松屋デパートの中に駅があることは知っていたが、乗る機会がなかった。初めてが重なり、結構テンションは上がっていたが、子供じゃないからと、グッと抑えた。ところが、業平橋という駅に着く直前、閉じこめていたハイテンションが一気に噴出してしまった。なんと、電車が、建設中の東京スカイツリーの真下を通るではないか。生まれて初めてスカイツリーを間近に見て、びっくりしてしまったのだ。生まれて初めてがみっつも重なれば、誰でも変なテンションになって当然だろう。冷静に考えれば、スカイツリーは業平に建つことを知らない方がおかしいのだが、昔から、関心のないことは徹底的に無視する性格なのだ。なんでも、スカイツリーが完成した暁には、業平橋駅を「東京スカイツリー駅」に変えるらしい。業平という名前は、それなりに由緒ある名前だと思うのだが、あんな物のために変えてしまっていいのだろうか?
二人のお薦めステーキ屋は、東向島の駅から15分ほど歩いた所にある。初めての街を歩くのは大好きなので、妙なテンションのまま、ホロホロ行った。ところが店へ着いてみると、「まあ、なんということでしょう」、そこはお休みではありませんか…。
駅の近くで何かたべようということになり、来た時と違うルートへ駅へ戻る。妙なテンションの高まりを持続したままの僕は、駅へ向かう途中、古道具屋だか骨董品屋だか判らない店に引っかかり、ワゴンの中のジーンズの山をひっくり返す。LEE のライダースを発見し、本気で買う態勢に入ったが、冷静な友人夫妻の視線が、ブレーキをかけてくれた。結局、駅近くの中華の店で食事をし、ラー油つけ麺+水餃子をご馳走になった。
どうもありがとう。
「駅の下に東武電車がやっている鉄道博物館があるんだよ。これが結構面白いんだ」
「天井が硝子になってて、ホームに入ってくる電車を下から見られるのよ」
鉄道マニアでも電車好きでもないが、電車を下から見るのは面白そうだ。これで、生まれて初めてがよっつ重なることになる!
三人揃って、変なテンションで駅へ向かい、いざ鉄道博物館の入り口へ。ところが、博物館へ着いてみると、「まあ、なんということでしょう」、そこはお休みではありませんか…。
そのまま、東向島から再び東武電車に乗り、東京スカイツリーの建設現場下を通って浅草へ。
湯島へ帰る二人と、湯島に用事のある僕は、地下鉄銀座線に乗り換え上野広小路へ出た。待ち合わせたのが、銀座線の上野駅だから、往復、全く同じルートを辿ったことになる。
湯島で、正月用の「田作り」と「栗きんとん」を買い、近くの喫茶店でコーヒーを飲み、「良いお年を」と別れたが、二人に誘ってもらったおかげで、今日は一日、本当に楽しかった。
今年も、大晦日を残すのみだ。考えてみれば、ステーキ屋も鉄道博物館も、休みで当然かも知れない。だから、少しも腹は立たない。残念はふたつ重なったけれど、反対に、生まれて初めての体験が、一日にみっつも重なったのだ。こんなこは、そうそう起きない。しかも、スカイツリーをあんなに間近に見るという、貴重な体験も出来た。二人に感謝だ。
7000歩以上、歩けたしね。


