日々是お気楽-hearse


朝7時半に家を出て、調布へ向かった。

そんな時間に地下鉄を利用したことがないので、女性専用車両へ乗ってしまった。ただならぬ気配に気づき、次の駅で隣りの車両へ移ったが、あんな物を設定する意味が判らない。


昨日の通夜に続き、今日は野口験さんの告別式。

野口さんは自分の葬儀について、娘夫婦に三箇条の遺言を残していた。


一つ、 棺桶は、通常の物よりワンランク上とすること。

一つ、 火葬は、釜のランクをあげ、強火で短時間に焼くこと。

一つ、 骨壺は、安物の白でなく、高級品を選ぶこと。


いちいち、「らしい」なと納得させられるものだが、特に火葬には強いこだわりがあったらしい。


「弱火でちびちび焼かれたんじゃ、なげえこと熱くてたまんねえや。強火で一気に、バ~とやっちくりィ!」


ということだろう。

さらに、霊柩車にも注文をつけていた。「御輿飾りのない外車に乗せろ」というものだ。娘夫婦はわがままな注文に全て応え、立派な棺桶と強力な釜、琥珀色の骨壺を揃えた。霊柩車は黒塗りの大きなキャデラックだった。


最後の親孝行になった。


斎場の駐車場にはたくさんの霊柩車が並んでいたが、昔ながらの御輿飾り付きは、一台しかなかった。キャデラック、フォード、クライスラーに混じり、BMWやボルボの霊柩車もある。唯一の御輿飾り付きは、クラウンだった。


僕は、葬式に際して何箇条の注文を残そうか。

霊柩車は使わず、その時自分の運転していた車で運んでもらいたい…。