【惜別】
逸美は、弘樹の話に引き込まれていった。
「彼は。本当に夢を追いかけている人なのね。」
逸美は思った。
弘樹は、「ここのパーティは、つまんないから抜け出そうよ。」
逸美は、無言でうなずいた。
その夜、二人は結ばれた。
弘樹の立ち上げた会社に、O先輩が加わった。
弘樹が会社を辞めたことを知って、自分の可能性を確かめたかのだ。
彼が加入したことで、会社の業績が飛躍的にアップした。
彼が中心に開発した、スマホのアプリと新感覚のゲームが、爆発的にヒットした。
弘樹は、得た収入を投機に使い。利益を増やした。
新たな会社作り、会長に収まった。
会社は、急激に伸び、今や時の人となった、と同時に仕事が極端に忙しくなった。
まさしくCatch The Dreamであった。
うまく行きだすと、優秀な人材が次々参入して、会社は大きく膨れ上がった。
いつしか、弘樹と逸美は一緒に暮らしていた。
彼が、帰ってくるのはいつも明け方である。
帰ると寝ている逸美を抱いた。
仕事のストレスを一気吹き出すように激しく彼女を抱いた。何回も。
彼女は、何度もイった。それと同時に女の歓びを知った。
朝食を一緒に食べて、逸美は、出勤し、弘樹は仮眠を取った。
逸美もチーフデザイナーとして脂が乗ってきた。
パタンナーも優秀な人材が入ってきて、彼女のデザインの幅が広がった。
雑誌の取材も増えてきて、業界でも知られるようになってきた。
この時が彼女の絶頂期だったのかもしれない。
当然会社も業績が上がり、中堅アパレル会社から大手の会社になっていた。
会社内で異動があり、会社の創業者である現社長が会長に、彼の右腕としてここまで引っ張ってきたデザイナーの夏木優子が新社長になった。
それと同じく逸美もチーフデザイナーからデザインプロデュサーに昇格した。
実質デザイン部門のトップになった。新チーフデザイナーを外部からまだ無名の小川由美が就任した。
この人事に逸美は、驚きと共に新社長の狙いが分からなかった。
小川由美は、夏木優子が発掘しヘッドハンティングしたのだ。
暫くして、逸美にも理解できた。
小川由美は、天才的デザイナーであることに。
会社の売上はますます伸びたが、逸美の影が薄くなった。
実際デザインする機会は、管理職であるからなくなった。
そんなとき、フランスのP社から誘いがあった。
しかし、フランスに行かなければならない。
デザイナーとしては、夢を掴む大きなチャンスである。
女としては、弘樹と別れることになる。
彼女は、迷った。弘樹に相談した。
「君の本音は、どうなんだい。デザイナーとして最高の場所に登れるチャンスなんだよ。
チャンスは、待っていては来ないんだよ。チャンスは掴むものなんだよ。君の夢はどうなんだい。」
「わかっている。わかっているから辛いの。弘樹と離れたくない。」
「僕のために君のチャンスを潰したくない。」
「君は、向こうに行ってチャンスを掴んで夢を叶えなよ。」
「僕のことなんて、ちっぽけなことだよ。」
逸美は、会社を辞めて、フランスに行くことに決めた。
日本には、戻らない覚悟であった。
ただ思い残すことは一つ。
「弘樹、幸せになってね。」
逸美はそう呟いて、泣いた。
泣きながら、搭乗した。
逸美の惜別の思いを残したまま。
(了)
これは、フィクションであり、登場人物と実際の方とは、なんら関係ありません。
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